二度目の好きをもらえますか?
 移動教室の授業を終えたあと、麻衣子と女子トイレに寄った。特別棟にあるこのトイレにはほとんど生徒が立ち寄らない。
 なので秘密めいた話をするには打って付けの場所だ。

 麻衣子に昨晩起きた事を話そうと思ったのは、私の腫れた目を気にして心配させるのが嫌だったからだ。事の次第をちゃんと伝えて、安心させたかった。

「彩月のお母さんたちの気持ちも分かるし、なんか……こればっかりは我儘言えないね」

「……うん」

「って言うか、大谷、何にも言わないもんねー。早くに分かって良かったじゃん」

「うん」

 麻衣子は鏡に映る自身の顔を見て、それまで片方で緩く纏めていたシュシュをほどいた。編み込みを交えたハーフアップの髪型に、女の子らしさを感じてドキッとする。
 艶やかな髪を肩下に垂らし、手櫛で整えている。

「彩月、頑張ってるね」

「え」

「……大谷の事」

 麻衣子の可愛さに見惚れながら、「あ、うん」と単純な受け答えをする。

「彩月が思うようにさ、何か悩みがあるんだろうね?」

 麻衣子は手首にはめたシュシュをジッと見つめ、ハァ、と物憂げな吐息をついた。

「彩月が羨ましい」

「……え?」
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