二度目の好きをもらえますか?
 一瞬何を言われたのか、理解が追いつかない。私の何が、と頭上にクエスチョンマークを掲げる。

「今だから言えるんだけどさ。私……、失恋したんだぁ、この間」

 は……?

「っえ! って誰に? てか、麻衣子っ、好きな人!?」

 麻衣子は口を結んだまま、コクンと頷いた。

 うそ。全然知らなかった……。

「バイト先の先輩で……大学生なんだけどね。相手、ちゃんと彼女がいて。分かってて好きになったの。何回かデートみたいな事もしたんだけど、結局本命にはなれなかった」

「……そう、なんだ」

 麻衣子の気持ちが痛いほどに伝わってきて、かける言葉が見つからない。私は手洗い場の蛇口に目を落とした。

「言ってみれば略奪みたいな事をしようとしてたからさ。そんな自分が嫌になって、ちゃんと告白してきっぱり振られたの」

「……麻衣子」

「ははっ、事後報告でごめんね?」

 ううん、と首を横に振る。私が麻衣子と同じ立場だったとしたら、きっと彼女がいると分かった時点で諦めていた。

 麻衣子が私みたいに、気安く恋の相談をできなかったんだとしたら……それは私が麻衣子に甘え過ぎていたからだ。
< 143 / 193 >

この作品をシェア

pagetop