二度目の好きをもらえますか?
「彩月がさ。大谷の事で頑張ってるから……いい加減告白しようって踏ん切りが付いたの。だから私は後悔してない。彩月のおかげで前に進めたと思ってる。ありがとね?」

「麻衣子ぉ」

 思わず麻衣子を抱きしめていた。私が麻衣子を慰めてあげたいのに、ヨシヨシ、と背中をさすられているのが私なんて、構図として間違ってる。

 麻衣子は一度手首にはめたシュシュを外し、洗面台の側に置かれたゴミ箱へ捨てた。ためらいは全く見られなかった。

 なんで、と目を見張っていると、麻衣子はふわりと微笑んだ。

「先輩に買ってもらったものだから……もう私には必要ない」

「……。そっか」

 麻衣子の真っ直ぐで澄んだ瞳を見つめて、私は内から込み上げる熱い感情を飲み込んだ。

 私が知らないだけで、麻衣子には様々な葛藤があったのだろう。

 それを自分の中だけで整理して、納得のいくように決着をつけた。

 美鈴も麻衣子も凄い。強くて、たくましい。

 私の恋はどんな結果になるか分からないけれど、私も麻衣子たちに負けないように、悔いだけは残したくない。

 次の授業の始業ベルが鳴り、慌てて廊下を掛けた。
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