二度目の好きをもらえますか?
「賢ちゃん、これからどこか行くところ?」

「そうだけど」

「いつもどこ行ってるの?」

「……え」

「ほら、先週の土日もバイク出してたでしょ?」

 私の質問を受けて、彼は首を傾げる。

「どこって……。まぁ思い付くままに適当に走らせてるだけだから、いつも行き先なんてないけど」

 ……え。あ、そうなんだ?

 私は彼に気付かれないように、そっと安堵を呑み込んだ。

「それがどうかしたか?」

「あ、ううん。特別には」

 本音を言えば、元カノのカオリさんのところに行っているんじゃないかという不安があった。

「それに」と続け、賢ちゃんが小声でボソッと呟いた。

「……どうせ来年までだしな」

「え?」

「いや、何でもない。じゃあな?」

「あ、うん」

 発進するのだと思い、私は彼から距離を取った。行ってらっしゃい、と手を振った。

 エンジンの唸る音が風を震わせて鼓膜を揺らす。賢ちゃんは颯爽と走り出した。

 今の、どういう意味だろう?

 わかんないや……。

 角を曲がって見えなくなるまで、私の目は彼の背中を追いかけた。

 ……でも。

 自然と口角が上がる。フンフンとつい鼻歌まで口ずさんでしまう。
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