二度目の好きをもらえますか?
13.ひとを憐れんだり同情したり、そういうのはウンザリだ。
断続的に降る雨が、傘の上でバチバチと音を立てる。
私はピンク色を背景に描かれた黒猫を見上げた。傘の曲線を雨水がなぞり、骨の先っぽからポタポタと水が滴り落ちている。
昨日から降り始めた雨は、まだ数日続くらしい。
今朝テレビで見た天気予報では、秋雨前線がしつこく居座っていると言っていた。
お気に入りの傘をくるくる回し、「雨もこれだけ振ると水族館みたいだねー」と言って隣りを見上げる。
賢ちゃんは僅かに眉をしかめ、「うーん」と唸った。青い傘を差す彼の横顔は、雨と水族館の繋がりを模索しているようだ。
今日は運よく下校時間が重なったので、並んで歩いている。ラッキーだ。
すらっと背が高くて、黒目がちな瞳にサラサラこげ茶の髪。顎より下に浮いた喉仏を見ると何故かいつもドキッとする。
賢ちゃん、今日もカッコいいなぁ……。
あまり熱視線を送ると気付かれてしまう、そう分かっていつつもチラチラと見てしまう。
好きな人を間近に見られる、好きな人と並んで歩ける、これは今までに一度もなかった経験だ。
勿論、好きな人と気安く話せる事も。
「そういや、明日から中間なんだよな」