二度目の好きをもらえますか?

13.ひとを憐れんだり同情したり、そういうのはウンザリだ。



 断続的に降る雨が、傘の上でバチバチと音を立てる。

 私はピンク色を背景に描かれた黒猫を見上げた。傘の曲線を雨水がなぞり、骨の先っぽからポタポタと水が滴り落ちている。

 昨日から降り始めた雨は、まだ数日続くらしい。

 今朝テレビで見た天気予報では、秋雨前線がしつこく居座っていると言っていた。

 お気に入りの傘をくるくる回し、「雨もこれだけ振ると水族館みたいだねー」と言って隣りを見上げる。

 賢ちゃんは僅かに眉をしかめ、「うーん」と唸った。青い傘を差す彼の横顔は、雨と水族館の繋がりを模索しているようだ。

 今日は運よく下校時間が重なったので、並んで歩いている。ラッキーだ。

 すらっと背が高くて、黒目がちな瞳にサラサラこげ茶の髪。顎より下に浮いた喉仏を見ると何故かいつもドキッとする。

 賢ちゃん、今日もカッコいいなぁ……。

 あまり熱視線を送ると気付かれてしまう、そう分かっていつつもチラチラと見てしまう。

 好きな人を間近に見られる、好きな人と並んで歩ける、これは今までに一度もなかった経験だ。

 勿論、好きな人と気安く話せる事も。

「そういや、明日から中間なんだよな」
< 148 / 193 >

この作品をシェア

pagetop