二度目の好きをもらえますか?
 傘の持ち手に目を留めた時、賢ちゃんがポソっと言った。

「あ、そうだね」と相槌を打つ。

 どうでもいい事だが、さっきから靴に水が染みてきて、ちょっとだけ気持ち悪い。

 家に着いたら靴下を履き替えないと。

 地面を黒く染めた雨粒は、強弱の変化こそあれど、一向に止む気配がない。ところどころに水の幕が張り、丸い波紋が浮かんでは消えている。

「お前は勉強できてるか?」

「うん?」

「テストの」

「あー……うん。まぁそれなりには。土日にしっかりとやったつもりだから、あとは前日のおさらいをやって、実力を試すだけかな」

「おー、頼もしい」

 賢ちゃんの目が不思議と輝いて見える。

「そんな彩月に頼みがある」

「え」

 賢ちゃんが私に……?? なんて珍しい。

 まさに天変地異だ。この後台風が来て、津波に流されてもおかしくない。

 想像してからぶるっと身震いすると、「彩月?」と言って彼が怪訝な顔をする。

「ああっ、ううん。何でもない。それで頼みってなに?」

 うん、と頷いてから賢ちゃんが遠慮がちに言った。

数II(すうに)でさ、分かんないとこあるからちょっと教えて欲しいんだけど」
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