二度目の好きをもらえますか?
「……っえ」

「彩月、お前勉強できるだろ?」

「できるって程じゃないけど」

「啓斗と光輝が、小谷はああ見えて頭良いって言ってたぞ?」

「……」

 ああ見えては余計だと思う。

「それにお前、数学β(ベーター)クラスだろ? 俺α(アルファ)だもん」

「……うん。まぁ」

 数学の授業は二科目あって、数IIはみな共通だが、数学αと数学βはそれまでの成績順で振り分けられる。

 私はβになり、賢ちゃんはαだ。因みに麻衣子もα。私もαが良かった。

「という訳で、前日で悪いんだけど頼む」

「……あ、うん。分かった」

 て言うか、良いのかな?

 好きな人と勉強をする、とか。漫画にありがちなラブイベントじゃないか。

 賢ちゃんは「さんきゅ」と言いながら嬉しそうに笑った。その笑顔に胸がキュンと締め付けられる。

 私の心臓、もつかな……?

 傘の持ち手を胸の前でぎゅっと握りしめ、私は足元に目を据えた。黄色いスニーカーの中はさっきより雨水が染みて、不快指数が上がっている。

 自宅へ続く角を左に曲がった時、彼はおもむろに足を止めた。

「賢ちゃん?」
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