二度目の好きをもらえますか?
「ど、どうしたの、さっちゃん!? 傘差さなかったの??」

「差してたけど……転んじゃった」

 えへへと笑いながら頭を触ると、お母さんは呆気に取られてポカンと口を開けた。

 ずぶ濡れになった私の格好を見て、当然の事のようにシャワーを勧められる。

 あんまり遅くなったら、待たせちゃうんだけどな……。

 時間のロスを気にして迷う気持ちはあれど、言われるがままに急いで体を温めた。

 熱いシャワーを浴びていると、さっきまでの雨音が耳朶(じだ)に蘇り、心臓がズシンと重くなる。

 カオリさんは前回同様に、きっと電車を乗り継いで、わざわざ遠距離のなか会いに来たのだろう。そう思うと、知り合いでもない彼女の事を不憫に思ってしまう。

 嫌な感情だ。気にしちゃ駄目、と言い聞かせ、私は頭を振った。

 脱衣所でバスタオルを巻き、お母さんが準備してくれた部屋着に一旦着替える。

 通学鞄を手に二階へ上がった。一段一段、階段を上がるたびに、足に重力を感じた。

 ズブズブと泥沼に嵌まり込んでいくように、気持ちは暗く、下へ下へと沈むばかりだ。
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