二度目の好きをもらえますか?
 花織さんが帰ってから、まだ三十分ほどしか経っていない。駅までの距離はゆっくり歩くと十五分、走って八分だ。

 タイムラグを考えると、既に電車に乗った可能性もあるが、賢ちゃんに止めて貰いたいと思っているならまだ最寄駅(そこ)にいるはずだ。

「っおい、彩月!」

 携帯を掴んだまま賢ちゃんも玄関に駆けてくる。

「賢ちゃん、行くよっ!」

「っああ」

 靴に足を突っ込んで、玄関先に立てて置いた傘を引っ掴む。足がつんのめり、転びそうになりながらも、しっかりと靴を履いて、傘を差す。

 雨の強さはさっきよりマシになっていた。

 が、強い風にあおられて、雨が斜めに差し込んでくる。頬や頭に無数の雨粒が当たり、傘の役目を全く果たせない。差しているのがもどかしいほどだ。

 グン、と隣りから勢いを感じて、横を向く。賢ちゃんが私を追い越した。彼はリレーのバトンのように、手に掴んだだけで、傘を差していない。

 私も傘を閉じた。賢ちゃんの背中を追い掛けて、無我夢中で駅までの道のりを駆けた。

 ***
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