二度目の好きをもらえますか?
 陸上部の短距離走者がスタートブロックを蹴るように、私は彼女目掛けて大地を蹴った。

 その瞬発力は、今までに出した事のないパワーだった。花織さんに突進する勢いで手を伸ばし、私は彼女の右腕を掴んだ。

 彼女が大きく目を見開き、アッ、と呼吸を震わせた。圧倒的な勢いですぐそばまで迫る電車を、視界の端に捉えた。

 私はもう片方の手を添えて、彼女の右腕を全力で引いた。

 グラリと体勢を崩した花織さんと、共倒れになる。快速電車が轟音を響かせながら私たちの前を通り過ぎた。突風が走り抜け、彼女の髪がふわふわと揺れる。

「……っな、」

 彼女は身を起こし、眉間をしかめた。

「何するのよッ!」

「それはこっちの台詞だよ!」

 私は後ろ手で体を支え、花織さんに怒鳴りつけた。

「死んだら全部終わるんだよっ!?」

「だったら、なによ!」

「あなたが居なくなったら、親も友達もっ、周りのみんなが悲しむ! 賢ちゃんだって傷つく!」

 彼女は座り込んだままで洟をすすり、なによ、と呟いた。

「賢二が泣いて後悔するんだったら、やる価値あるじゃない」

「それを見れないのに?」

「……え?」
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