二度目の好きをもらえますか?
 うーん、と考えて、私は首を傾げる。

「フラれた、とか。重いとか言ってたのは?」

「ん?」

「ほら、前に病院で。彼女にフラれたとか、賢ちゃんが重いって言われた、みたいな事……言ってたでしょ?」

 ああ、と嘆息し、賢ちゃんは不愉快そうに顔をしかめる。

「二股されたんだから、俺がフラれたようなもんだろ。重いってのは、岸に言われた。花織が言ってたぞ、って」

「そっか……」

 賢ちゃんの思いを想像すると、なんだかやり切れない気持ちになる。

 それと同時に、病院で聞いた、彼の別の言葉も思い出した。

 ーー「別にいーよ。ヒトの気持ちなんてどうこう出来るもんでもないし」

 遠距離になっても週四ぐらいで会いに来てくれるのに、何で重いの、と。私が尋ねた問いに賢ちゃんは「知らない」と「別にいい」で返した。

 あれは多分、自分の気持ちの事を言っていたんだ。花織さんがどうってわけじゃなく、賢ちゃんの気持ちがもうどうにもならないという事を……。

「ありがとな」

「……うん?」

 二度目のお礼に、私は言わずもがな目をパチクリさせる。何が、と首を傾げた。

「前にさ。彩月、言ってくれただろ。困った事があるなら話聞くって」

「……ああ、うん」

 あれ、と続け、賢ちゃんの目が優しげに細められる。眉を下げて、彼は笑って言った。

「実はけっこう嬉しかったんだ。まぁ実際のところは……カッコ悪くて、なんにも言えなかったけど」
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