二度目の好きをもらえますか?
16.Epilogue.
「さっちゃん! まだ食べてたの?? おもてに賢二くん来てるわよ?!」
「えっ!」
スクランブルエッグの最後のひと口をスプーンでかき込み、オレンジジュースのグラスを傾けた。
「あとっ、あと五分で出るからって言っておいて、お母さん!」
まだ歯磨きもしなければいけないので、右手をパーにして伝えると、お母さんは「仕方のない子ね」と言って笑う。
「玄関で待ってもらうように言うわね?」
「お願い〜っ」
今朝はなかなか髪型が決まらなくて、洗面所で長らく格闘してしまった。食べ終えた食器をシンクに下げてから、急いで洗面所に向かう。
短い髪をハーフアップにまとめた自分が鏡に映り、ふふっと顔を緩めた。飾りゴムの黒猫を合わせ鏡で確認して、歯ブラシに歯磨き粉を付けた。
「っあ、ごめんね、賢ちゃん! もう、すぐだから!」
玄関前の廊下に出ると、賢ちゃんが既に三和土に立っていた。
「慌てて転けんなよ?」
笑顔の彼に了解、と手振りで伝えてから二階へ上がり、通学鞄を引っ掴んだ。