二度目の好きをもらえますか?
……ん。待てよ? さっき、大谷くん。
今の会話で私はとても、とてーも、重要な聞き逃しに気付いた。
私の真顔を見て、何だよ、と彼が眉を潜める。
「さっき、私の事。彩月って呼んだ?」
「それがどうかしたか?」
まるで何でもない事のようにシレッと言うものだから、また笑みがこぼれた。
「ううん、何でもない」
何なんだ、これ。
こんなちょっとした事が、何でこんなに嬉しいんだろう。
「つーか。塩対応とかじゃなくてさ、本当にもう帰った方が良いんじゃねえの?」
「え」
窓の外を指さした彼を見て、私は後ろを振り返った。
夏なのでまだ明るいが、徐々に夕闇が迫っている。
ああ、と私は息をつく。スマホの時計を確認するともう六時半を過ぎていた。
「……ねぇ、賢ちゃん。もう夏休みに入るし、まだ退院も出来ないんでしょ?」
「……いや。見た目よりひどくないから、一週間かそこらで退院はできるよ」
「あ。そうなんだ?」
「うん。……つっても、しばらくはギプスだから夏休みは当分退屈になりそうだけどな、バイクも乗れないし」
憂鬱そうにする彼を見て、何か元気になれそうな事はないだろうかと考える。