二度目の好きをもらえますか?
「あ、はい。大丈夫です、というか好物です。ありがとうございます」

 慌てて答えると声が若干上ずった。

 ふっ、と笑い声が耳に届く。

「緊張してんの?」

 スマホから目を上げた賢ちゃんが意地悪そうに口角を上げている。

「そりゃあそうでしょ、よそのお家だもん」

 ふぅん、と相槌を打つと彼はまたスマホを片手で器用に弄る。

「さっきから何やってるの? ゲーム?」

「そ」

「右手だけで凄いね、やり難くない?」

「そりゃまぁ、多少は。でも折ったのが左で良かったよ。利き腕使えないのはやっぱ不便だし」

「そっか」

 賢ちゃんの左腕を吊り下げる三角巾を見ながら、それでもやっぱり大変だろうなと考え、気持ちがモヤモヤした。

 左腕でも片手しか使えないのは不便だろうし……。

 何だろう、この気持ち。

 生活が不便になった賢ちゃんに、私同情してるの?

 何か嫌だ。こういうの……。

 それ以上何も言えずに大人しく待っていると、程なくして食欲をそそる香りが漂い、お腹が鳴った。

 *

 その日の夕方。急に思い立った。
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