二度目の好きをもらえますか?
 賢ちゃんちでお昼をご馳走になってからすぐに帰宅し、何もやる気が起こらずベッドの上でダラダラ過ごしていたけれど。

 ふと私も“同じ事をやってみよう”と思い付いた。

 一階のキッチンで程良い大きさのビニール袋を見つけ、工作バサミでチョキチョキと思うように切り込みを入れる。

 取っての部分を出来るだけ長く加工し、それを首の後ろで結んでぶら下げる。

 そして先に切っておいた袋の両側面に、左手を曲げた状態で入れてみた。

 簡易的に作った三角巾だが、構造上は賢ちゃんがしているものと同じはずだ。

 左腕を吊り下げて初めて思ったのが、首が痛いなという事だった。

 不便、も有るけど。

 首裏に重力が掛かるのがしんどいし、何より暑苦しい。

 でも、賢ちゃんは折れた腕にギプスもしてるから、もっと暑苦しいはずだ。

 こんな状態で、寝たり起きたりして、生活してるんだよね……。

 今まで骨折などした事がなかったので、改めて大変さを痛感した。

 私なら半日で根を上げそうだ。

 ふと出窓の外に目が向いた。いつも全開に上がったロールスクリーンを一瞥してから、向かいに見える隣家の窓を見つめた。

 黒っぽいカーテンがきっちりと引かれ、部屋の様子は全く分からないが、あれが賢ちゃんの部屋だろうか?

 私はレールからぶら下がる玉状の紐を引き、ロールスクリーンを下げた。
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