二度目の好きをもらえますか?
 *

「……何やってるの、さっちゃん??」

 夕食の時間になり、お母さんが目を丸くした。ビニール袋で左手をぶら下げた格好で席についたので当然だ。

「自分にできる範囲で骨折した人の気持ちを味わってるの」

 手前に並んだ好物のクリームシチューをスプーンですくい上げながら、なるほどと思った。

 確かに、利き腕が自由に使えるというのはありがたいかもしれない。

 ニコニコしながら、シチューを頬張っていると、お母さんは気の抜けた声で「そう」と相槌を打った。

「夏休みの……。宿題か、なにか?」

「まぁね〜」

 今し方揚がったばかりのコロッケをお皿に盛り、お母さんがテーブルに並べてくれる。

 同じお皿に添えられたサラダの彩りにテンションを上げた。

「わーい」と声を上げ、箸をつける。

「な! 何やってるんだ!? 彩月っ」

 浴室から出て来たお父さんがギョッとした表情(かお)で、お母さんと同じ事を言う。

 美味しいを連発する私を見兼ねてか、お母さんが事情を説明していた。

 片腕だけの生活で気付く事、思う事は沢山あった。

 *

「それでね、何が大変だったかって言ったら、シャンプーがあり得ないほどやりにくくて」

「……へぇ」
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