二度目の好きをもらえますか?
 言いながらニヤリと笑みを向けられるが、さっぱり分からず、私は首を傾げるばかりだった。

 賢ちゃんと関わっていると、私の知らない私が顔を出すような気がするけど、それを恋と断定するのはどこか違う気がする。

 うだるような夏休みを、課題と擬似骨折体験と麻衣子との遊びで過ごし、私は二学期を迎えた。


「……あ。彩月」

 家の門を出たところで名前を呼ばれた。声がした方へ振り返ると、通学鞄を肩から提げた賢ちゃんが私を見ていた。

「賢ちゃん、おはよ」

「おう」

 彼の左側へ行き、通学路を並んで歩く流れになる。

 ぶらりと下ろした左手を見て、ふっと口元が緩んだ。

「ギプス、取れたんだね?」

「ん、ああ。昨日な。学校始まる前で良かったよ」

「そか」

 ちゃんと怪我が治ったみたいで良かったなぁ。

 ふふふ、と一人で笑っていると隣りから怪訝な視線を向けられる。

 おっと、怪しかったか?

 何も問われてはないのだが、私は首を振り、「何でもないよ」と答えた。

「……なんか。夏休みにチラッと見えたんだけどさ」

「ん、なに?」

「お前ビニール袋で腕吊ってなかった?」

 ……あ。

 ヤバ、あれ見られてたのか。

 私は彼から目をそらし、ぎこちなく笑みを固めた。

 私の反応を図星と受け取り、賢ちゃんが大仰な息をつく。
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