二度目の好きをもらえますか?
「親の立場になったら色々あんだよ。まぁ彩月みたいなお子さまには分かんねーと思うけど、バイクは転けたらモロだから」

「お子さまで悪かったわねー。ってかモロって何さ?」

 口を尖らせて不満をボヤくと、賢ちゃんは停めたバイクから私に視線を飛ばした。

「事故ったら即死か、助かっても後遺症……とか」

 大真面目な顔で言う賢ちゃんに、一瞬だけ背中が震えた。ほんの一瞬だけブルリとして寒くなった。

「と言っても。わざわざ親から見えないとこで乗せるのもどうなんだって話なんだけど」

 そう独り言のように呟いたあと、賢ちゃんはバイクに跨り、すっぽりと頭が覆い被さるヘルメットを付けた。

「被らないのか?」

「え、あ。うん、被るよ」

「もしかして怖気付いたか? 止めるなら今だぞ?」

「むっ、そんなんじゃないし!」

 頬を膨らませながら一目惚れのヘルメットで頭を守り、カチ、とバックルを止める。

 その時、賢ちゃんの目元が優しげに細められたような気がして意味もなくドキッとする。

「それじゃ後ろ、乗れるか?」

「あ、うん。待って……」

 ステップに足を掛けて彼の後ろに乗ると、不安定な姿勢についグラリとなる。
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