二度目の好きをもらえますか?
「確かにそうかもしれないけど……新しい恋なんてそう簡単には見つからないよ。
いっそ、コンビニにでも並んでてくれたら良いのに。そしたら買うのに」
「あ、それ良いね〜。面白そう」
言いながらそれまで手首につけていたシュシュを外し、麻衣子がニカッと笑う。
そして肩下まで伸ばしたミディアムヘアをサッと結ぶと、また漫画の世界へのめり込んだ。
私はピンクのマカロンクッションを抱きしめ、ハァ、とため息をこぼした。
去年同じクラスだった結城くん。明るくて優しくて、人望の厚い彼は私なんかが手を伸ばしちゃいけない相手だった。
男女分け隔てなく仲良くできる彼の笑顔が、今となっては尊い。
簡単に気持ちが切り替えられたら楽なんだけど。
想いを育てるだけ育てて、意思表示もせずに捨てなければならないのだから、まだ感情がついて行かない。
そもそもハートブレイクなのだから、まずは傷付いたハートを修復するのが先だ。他の男子の事なんて考えられない。
ふと近所の騒音が気になり、私は出窓の先を見つめた。
トラックのエンジン音が響き、それが止むとガタガタと扉を開ける音や何か荷物を運び込む音が聞こえた。
抱きしめたクッションを脇に置き、何気なく窓を開けて見下ろしてみる。
引越し業者のトラックらしいと知り、数年空き家だった隣りに誰かしらが引越してきたのだと察した。