二度目の好きをもらえますか?
 羞恥の正体は、考えるまでもなかった。

 ハテナで覆い隠されていた気持ちに、私はようやく答えを見出した。蜃気楼は今し方晴れたばかりだ。

 麻衣子に指摘された通り、私は賢ちゃんの事が好きなんだ。

 友達としての感情から恋愛感情に変わったんだ。

 駆け足で家の前まで辿り着き、左胸に手を当てた。門扉付近でまたしゃがみ込む。

 心臓の鼓動はあり得ないほど速く打ち、新しい恋に戸惑いすら覚えた。

 *

 遅刻しないように登校し、教室の後ろ扉を開けると、ちらほらとクラスメイトの視線を浴びた。

 好奇心にアッと目を見張る視線や半笑いの表情が、どこか意味深さを物語っていて、私は首を傾げた。

 なんだろう……?

 いつもと違ったクラスの様子に、居心地の悪ささえ感じる。自分の席まで歩いて鞄を下ろした時、ポンと肩をたたかれた。

「彩月、おはよう」

「……麻衣子」

 おはよう、と挨拶するものの、麻衣子は私の右手をグイッと引いて、廊下に出る事を促した。

「どうしたの?」

 単純に意味が分からなくて尋ねると、麻衣子は私の顔を見て安堵の息をついた。

「今日は大谷と同じ時間じゃなくて良かったよ」

「はい?」

「あのね、彩月」

「うん」

「あんまり動揺しないで聞いて欲しいんだけど…」

「……? うん」
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