二度目の好きをもらえますか?
 帰宅時間に至っては、彼が特定の友達である瀬川くんや高山くんと帰っているので気安く近付けない。

 それでも家が隣同士なのだから、どうしても喋りたくなったらインターフォンを押して直接行けばいいーーそう考えてみたものの、そんな勇気は一ミリもない。第一、この状況下では不自然極まりない。

 それに、とまた無言で嘆息し、元々感じていた不安に胸が苦しくなった。

 賢ちゃん自身が私を避けているようなのだ。

 直接言われたわけではないけど、関わらないでほしい、という事かもしれない。

 賢ちゃんの中では、小学生時代のあの黒歴史が未だに尾を引いている。

 転校初日に「話しかけないで」と言われ、「好きじゃない」と宣言までされた。今はすっかりあの状態に戻ってしまったーーそういう事だろう。


 *

 賢ちゃんと話せないまま、週末を迎えた。

 土曜の夜、晩ご飯を食べてから二階の部屋に上がり、本棚に陳列された漫画の背表紙と睨めっこする。

 何か読んでからお風呂に入ろうかなと考えるものの、ふと開きっぱなしになった出窓が気になった。

 壁際に寄せたベッドに上がり、ロールスクリーンを下ろそうかと玉状の紐を掴んで、暫しぼうっとする。
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