二度目の好きをもらえますか?
 出窓の床板に手をつき、慌てて腰を上げると驚いた表情(かお)をする賢ちゃんとまともに目が合った。

 多分、時間にすると数秒だったと思う。

「っ賢ちゃ、」

 窓は閉めたままだが、私はそのまま声を張り上げた。

 しかしながら、彼は気まずそうに眉を寄せ、慌ててカーテンを閉めてしまった。

「……あ」

 ……やっぱり。避けられてる。

 賢ちゃんとこのまま話せないなんて嫌だ。

 目の前がうっすらと滲み、涙の幕が張る。しゅん、と洟をすすった。

 私は唇をキュッと噛み、再び暗く染まった真向かいの窓を睨んだ。

 まだ電気は点いてるんだから、部屋にはいるはずだ。

 こうなったら……。

「見てろよ〜」

 私は急いでベッドから降り、勉強机に向かった。

 まずペンケースを開けて、油性マーカーを机上に転がす。そしてシンプルな造りの本立てから、去年美術で使っていたスケッチブックを取り出すと、真っ白なページを開けてマーカーで思うままにメッセージを書き込んでいく。

 それを一旦出窓まで運び、また勉強机に戻る。
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