二度目の好きをもらえますか?
「ねぇ、彩月」

 麻衣子に呼ばれて振り返る。

「良かったら私のバイト先にいる他校の男子、紹介しようか?」

 視線は漫画に据えたまま麻衣子がポツリと言う。

「……いや、いい」

 今は気を利かせてくれる麻衣子の気持ちだけを、ありがたく頂戴することにした。


 *


「……大谷 賢二です。よろしくお願いします」

 梅雨入りしたばかりの月曜日。

 深い緑色の黒板を背にして、彼が私の前に現れたのは、失恋をしてから三日後の朝だった。

 私は奥二重の両目をバッチリ開けて、その転校生を凝視する。

 お。大谷、賢二って……。

 記憶の中で「さっちゃ〜んっ!!」と私のあだ名を呼びながら追いかけて来る“けんちゃん”がまざまざと蘇る。

 同姓同名……、じゃないよね?

 七年前と比べてスラッと背の伸びた彼は、世間で言うイケメンかもしれないが、幾らかあの頃の面影が見える。

 けんちゃんは嬉しい時、とにかく頬を赤く染めて笑い、さながらその笑みはア◯パンマンみたいだった。

 実際、「なんとなく似てるよね」って言った覚えもある。

「えぇと……大谷の席は、だなぁ。
 ああ、小谷の隣りだな。ハイ、小谷手ぇ挙げる」
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