二度目の好きをもらえますか?
『じゃあ十分後。前に乗せた場所に集合な』

「はーい!」

 通話が途切れると、スマホで時刻を確認した。

 七時四十分だ。

 腰を上げて真っ先にロールスクリーンを下ろした。箪笥の引き出しから私服を選んで出し、いつもの部屋着からそれに着替える。バイクだから下は言わずもがなジーパンだ。

 顔を上げて黒猫型の掛け時計を一瞥し、部屋を出る。

 お財布とスマホだけを入れた鞄を手に、階下へ降りて玄関で靴を履く。

「……え、さっちゃん?? こんな時間からどこ行くの?」

「あ。お母さん」

 やば……。

 私は咄嗟に頭をフル回転させた。

「あの、今からね。近所のファミレスで麻衣子と会う約束したの。もう待ってるから行かないと」

「……え。今からってもうすぐ八時よ?」

「うん」

「うんって……」

 お母さんは呆れて息をつく。

「大丈夫だよ、携帯も持ってるしすぐに帰って来るから」

 眉を寄せたお母さんの顔には、明らかに心配の二文字が浮かんでいる。

「あのね、さっちゃん。会うのは麻衣子ちゃんと二人なんでしょ? いくらなんでも女の子だけで夜出歩くなんて危ないわよ、やめておきなさい」

「……うーん」
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