二度目の好きをもらえますか?
 いつもと変わらず怠そうな口調で担任から指をさされ、私は仕方なく手を挙げた。

 よりにもよって、隣りの席。

 何となく嫌だなと思った。

 けんちゃんとの過去の関わりは、四年生の一学期だけだったはずだけど、私の事を覚えていたらどうしよう。

 七年前の夏を思い出す。

 二学期が始まった頃には確かけんちゃんは既に引っ越していて、私は単純に、安心したような記憶がある。

 チラッと不安定な視線を送ると、バチっと思い切り目が合い、彼はハッとしてから眉を潜めた。

 やっぱり、覚えてる?

「それじゃあ、みんな。仲良くするように」

 まばらな拍手が上がる中、大谷くんは俯き加減に歩き、ガタ、と隣りの椅子を引いた。

「よろしく」と社交辞令にも似た挨拶をすると「……うん」と曖昧に頷くだけで彼はこちらを見ようともしない。

 机の脇に鞄を引っ掛け、私と少しでも距離を取るように頬杖を付いたままそっぽを向かれる。

 何となく疑問を感じて首を捻った。

 ああ、そうか。

 あの頃の事があるから、きっと気まずいんだ。

 という事は、けんちゃんの求愛行動はあの頃一時的に起こった感情で、今となっては特別、他意なんてない。
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