二度目の好きをもらえますか?
 毎朝決まった時間に家を出るけれど、今朝も賢ちゃんの姿を見なかった。

 何だろう。寝坊、かな?

 何度も後ろを振り返りながら正門を通り過ぎ、下駄箱の前で上履きに履き替えた時、「あっ」と声がもれた。

 賢ちゃんのスニーカーがきちんと箱に収まっていた。

 あれ、もう来てるんだ?

 後ろ扉から教室に入ると、「おはよ」と麻衣子に声を掛けられた。

「今日集まって話すんだよね?」

「うん」

 ゆうべのラインで既に報告済みなので、私はキョロキョロと室内を見渡した。賢ちゃんと高山くんは来てるけど、瀬川くんはまだだ。

 私と同じく麻衣子も目を向けていたようで、グイッと腕を引かれた。

「おはよ〜」

 窓際の一番後ろで喋る賢ちゃんと高山くんに、麻衣子が積極的に挨拶をする。

「……おう」と返事をしたのは賢ちゃんで、高山くんはぎこちなく笑っただけだ。

 私は賢ちゃんに視線を飛ばし、思い切って話しかけた。

「……せ。瀬川くん、まだ来てないんだね?」

 教室で話しかけるのが久々なので、幾らか緊張する。賢ちゃんは、ああ、と眉を寄せた。

「あいつ、遅刻かもしんねぇから」

「そっか」
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