if…運命の恋 番外編Ⅲ『愛に変わるとき』
美子にそう言った後で視線を外すと、もう一度展望台から見える夜の東京に視線を向けた。美子の気配を背中に感じてはいたが、それ以上かける言葉はない。
俺は振り返らなかった
俺の名前を呼んでくれる・・俺の妻が来るまでは・・・
暫く経ってから、ようやく春子が俊と一緒に展望台にやって来た
何食わぬ顔して、本当にこいつは。
『遅かったな。随分待ったよ』
「ご、ごめんなさい。俊ちゃんったら、いろんなモノをねだって大変だったの」
『そう?で、選べたの?』
「ええやっと、、あの、、、勇さん?」
春子がとっても顔を強ばらせて俺の名前を呼んだ。
本当に俺の妻は、どうしようもない馬鹿なんだ。
『ずっと君と俊を待っていたからね、この景色、見飽きたよ。
君が見終えたら、ホテルに帰ろうか? 疲れただろ?』
「勇さん、怒ってる?」
『誰に?ああ~俺の妻にか?そうなんだよ。驚くことするからな。 ほらッ、俊こっちおいで』
俺は春子に抱かれた俊を受け取ると、片手で抱っこして
もう一つの手で、春子の手を掴んだ。
春子は俺に手を引かれて、ガラス張りの窓の傍に行くと東京の夜景を見ながら涙を零して言うんだ
「綺麗ねぇ・・」
春子はそう言いながら、頬をつたう涙を手で拭っていた。
俺は春子の肩を引き寄せて、そして小さな声で言った
『馬鹿だなぁ、プロポーズの時言っただろ? 俺はお前だけで手一杯だって』