if…運命の恋 番外編Ⅲ『愛に変わるとき』

「空港からホテルまでは遠いのかしら? 俊が眠いみたいだから心配で」
『ああ本当だ、とっても眠そうだ。俺が俊を抱っこするから大丈夫だよ。それにホテルだけど、タクシーで30分ほどだと思うよ』
そう言うと春子は、ちょっと考えてから聞いてきた。

「近いのねぇ、、そこは東京タワーが近い場所?」
『うん?・・東京タワー?』
「ええそう」
『う~ん、どうだったかなぁ、、ああ、でもそんなに遠くはないよ。タワーは高いから、ホテルから見えるかもしれないね』
「そう・・・」

春子はそんな風に言いながら、俺を見て微笑んだ。春子の笑い顔は、いつの頃からか俺の癒しにもなっていたし、そんな春子がとっても可愛いと思えるようになっていたんだ。
だけどこの頃の俺は、春子に対してどうしても上手に愛情表現が出来なくて、寂しい想いをさせていたかもしれない。もともと女性に対して愛情表現を積極的にできる方ではなかったから。
俺から春子に”愛してる”なんて言葉はおろか、”好きだ”とさえ伝えていなかった。

すでに、俊という子供まで授かっていたのに、そんな表現は恥ずかしいというか、言わなくてもわかってくれているだろうという、情けない考え方を持っていた。



飛行機を降りての春子の第一声は今でも覚えている

「勇さん・・何だか臭くない? 変な臭いがしてる」
『うん、そうだね。これが東京の匂いかな? 人間ってすぐにこの臭いにも慣れるんだよ』


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