if…運命の恋 番外編Ⅲ『愛に変わるとき』
当時の羽田のあたりは工場地帯で、一日中工場から煙が出てるし、高度成長時代の真っ只中で、自動車の数も並みじゃないほど多かった。排ガスやそんな煙が、それに流される工場の汚染水の臭いが不快だったんだ。
当時は田舎で空気の美味しい九州から都会に降り立った春子が、東京の空気に違和感を感じてもおかしくない。
「えッ! ほんと?」
『うん、たぶんね。数分経てば慣れてしまう臭い』
春子は俺がそう言うと、とっても残念そうな表情で言った。
「そうなのね、東京はもっと良い匂いがするところだって思ってたのに」
『クスッ・・』
春子のそんな純粋なところに触れると”春子らしいなぁ”と目を細めてしまう。
世間知らずというよりも、発想が豊かで可愛いんだ。
「何? 私、オカシイ事言った?」
『そうじゃないけど、どんな匂いがすると思ってたんだい?』
「・・・何ていうか、香水のかおり?、、かしら」
『香水? なるほど、香水ねぇ』