if…運命の恋 番外編Ⅲ『愛に変わるとき』
春子と一緒にいる時間はいつも楽しかった。
いつの頃からか、俺にとって春子は傍にいてくれることが当たり前の存在になっていたし、いるのが本当に自然で、だから俺の瞳には春子しか映らなくなっていた。
あの日、そう暮れも迫ったあの夜に、春子にはじめて自分の感性と同じものを感じたんだ。
同じ場面、同じ時に春子となら一緒に歩んで行ける・・と。
静かに流れる音楽、美味しい料理に、楽しい会話、可愛い息子と妻の笑顔は僕の全てで、こんな時間を持てている自分がとっても嬉しかった。
春子が突然に言って来た
「ねぇ、勇さん、東京タワーに連れて行ってくれる?」
『うん?』
「東京タワーにね、明日、行きたいの」
『・・・うん、別にいいけど、明日?』
「ええ、明日がいいわ」
俺は、何も知らなかった。君が考えていたことなど。
俺の中では、その頃はすでに”俺の勝手な恋”は終わったものだと思っていたし、考えさえしなかったんだ。