君に、虹色の恋をした。
 部活が終わるまで、一度も飛颯くんから目を離さなかった。というか、かっこよくて目が離せなかった。

 飛颯くんが帰る準備を終えたのを見計らって、私は勇気を振り絞って口を開く。

「は、飛颯くんっ」

「どうした?」

「あ、あの、……一緒に帰ってくれません、か?」

 ああ、言ってしまった。

 飛颯くんは目を丸くしている。

 ダメだったかな。
 ストーカーみたいって思われたかな。
 くっついてきて、ウザイやつだなって思われてかな……。

 こんなこと言わずにひとりで帰った方が良かったかもしれない。

 そんな私なんて知らずに、飛颯くんはニカッと笑った。

「紗奈ちゃんから言い出してくれるなんてサイコーやないかぁ。大丈夫、俺紗奈ちゃんと帰る気満々やで。女の子ひとりを夜道歩かせるバカ男子やないで、俺は」

 そう言ってくれたのが嬉しくて、目に涙が溜まる。

「え、な、なんで泣いたるん? もしかして俺と帰るん嫌やった?」

 私が泣き出してしまったのを慌てふためく飛颯くんが無性に面白くて、クスッと笑ってしまった。

「あ……。紗奈ちゃんが笑った……」

 飛颯くんは呆然と私を見つめている。

「え?」

「紗奈ちゃんが笑ったところ初めて見た……」

 も、もしかして、私笑ってなかったの?

 というか、心から笑ったのは久しぶりかもしれない。

 そっか、私、飛颯くんのおかげで笑えた……。

「飛颯くん……、帰ろう」

 私は涙声で、でも笑いながら暗い夜道を進む。

 夜だから道は暗かったけれど、飛颯くんが隣にいてか、なんだか明るく見えたのは目の錯覚だろう。
< 11 / 27 >

この作品をシェア

pagetop