君に、虹色の恋をした。
 お昼の時間になった。

 私には友達もいなかったし、お弁当はいつもひとりだった。

 裏庭に行って、隅のベンチでひっそり食べる。
 それが日常になった。
 裏庭には不気味がられて誰も来ないし、むしろ私には好都合と見てもいいくらいだ。

 だから今日も、草の茂る裏庭でお弁当を出しているところだった。

 シンプルなプラスチック製の中には、卵焼きやトマトなど、定番のお弁当の品々。これはすべて自作したものだ。母親は最低限のことしか私のことを見てくれなくて、それが当たり前でご飯でもなんでも、自分でやる。それが普通。実を言うと母親のご飯はそうそう食べたことがない。

「お前裏庭で食ってこいよ。どんな感じか見てきて」
「はぁ? なんで俺なんやか。お前が行けばいいやないか」
「飛颯こういうのに弱そうじゃん?」
「そういう問題けいな。まあええよ。行ってみたい思っとったし?」
「飛颯泣くなよ?」
「泣かねぇわい。学校で泣いたことないんやからな」
 男子生徒だろうか、言い合いが聞こえる。

 あの喋り口調。

 飛颯の名前。

 ……そんな偶然、あるわけないか。

 ちょっと期待していた自分がいた。

 箸で卵焼きをつまみ、口元に運ぶ。
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