さよなら、坂道、流れ星

第1話 千珠琉と昴

「この坂がなければ学校も近くて快適なのにね。」
駒谷(こまや) 千珠琉(ちずる)は自宅の小さな門扉の前でしみじみと呟いた。
小清瑞(ここ)に生まれた時点で無理な願いだろ。」
大河内(おおこうち) (すばる)は聞き飽きたといった口調で応えた。
この小清瑞(こしみず)という街は、海辺の街であり山沿いの街でもあるため坂道と階段が非常に多いのが特徴である。千珠琉と昴はこの街で生まれて共に約17年を過ごした幼馴染だ。二人は同じ高校に通い、家も隣同士なので時間が合えば一緒に登下校をしている。千珠琉は濃い栗色のやわらかなセミロングの髪、制服は膝上丈のスカートに学校指定の黒のハイソックスが定番で身長は155cm程度といったところ。昴は黒い短髪で制服はあまり着崩さない、身長は172〜3cm程度。二人ともごくごく普通といった感じの高校2年生だ。趣味が合うのか同じメーカーのリュックを通学用にしている。
「まぁそうなんだけどさー。いいな、昴はバイクがあって。」
「バイクあっても学校に乗ってけるわけじゃないからそんなにラクでもないけどな。」
「でもいーなっ。」
千珠琉は少し不機嫌そうに言った。
「なんだよ、なんか機嫌悪い?」
「全然!」
< 1 / 47 >

この作品をシェア

pagetop