さよなら、坂道、流れ星
【本当】

「……ほんと…」
思わずポツリと口に出す。

【どこに?】
【東京】

「とうきょう…」
夏休み前、“ ……うん、俺も東京。”と言った昴の顔を思い出す。
(…なんだ、進路じゃないじゃん…)

【いつ?】
【8月末】

「え、そんなすぐに…?」
今月末には昴は引っ越してしまうという。

(昴の隠し事ってこれだったか…。)
急に妙に冷静になった。

【なんで隠してたの】

【隠してたってわけじゃないけど】
(隠してたじゃん…)
歯切れの悪い昴の返信に腹立たしさを感じる。
【チズ、今時間あったら会えない?】
昴から連続でメッセージが届いたが、千珠琉は返信しなかった。
しばらくして何度か昴から着信があったが無視した。
返信“できなかった”、無視“するしかなかった”が正しい表現かもしれない。驚きとショックと怒りで、昴に何をどう伝えれば良いのかがすぐにはわからなかった。会ったら会ったで、ひどい言葉を浴びせるわがままな自分になってしまうことが容易に想像できてしまう。

(どうして…?)
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