さよなら、坂道、流れ星
翌朝はまた、昴の原付がバイトに行く音が窓の外から聞こえてきた。
(また早番なのに付き合ってくれようとしたんだ…。)
ベッドの中にいた千珠琉は半分夢の中のような意識だったが、昴の優しさをあらためて実感していた。

(意地悪言っても付き合ってくれるところが好き。)

(意地悪言ってくるところが本当は好き。)

(ぺピコ半分くれるところが好き。)

(いつも一緒に学校行ってくれるのが好き。)

(笑顔が好き。)

(困った顔も好き。)


(昴…いなくならないでよ…。)

抱いていた枕に顔を押し付けた。


それから数日雨が降り続いた。
テレビでは極大日(ピーク)を過ぎても何日かは流れ星が見られると言っていたが、それももう厳しいかもしれない。
この時期の雨は夏の終わりが近づいていることも感じさせ、ネガティブな気持ちになってしまう。
“ 昴とずっと仲良く一緒にいられますように”
ほんの数日前までは当たり前に叶うものだと思っていた願いごとが、急に神様から見放されて絶対叶わないものになってしまったように感じる。
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