さよなら、坂道、流れ星

第11話 流れ星

「え、なにこれ…」
自転車を漕ぐ昴の肩に手を掛けて立ち乗りしている千珠琉は、空を仰ぎながら戸惑っていた。
「何って、流れ星。100%見れるやつ。」
「え?意味がわかんない…」
「俺たちに合わせて星が流れてるだろ?」
ゆっくりと坂道を(くだ)りながら昴が言う。
「え〜〜…流れてるっていうか…空と一緒に動いてるよ…」
驚きと落胆を見せる千珠琉に昴は笑ってしまう。
「あー!笑ってる!ひどいよ〜…これじゃ願いごと叶わない…」
今日はとくに強く願いたいことがあったので、前の昴にも伝わるくらいシュンとしてしまう。
———キュッ
昴が自転車を止めた。
「ごめんな。チズが流星群見たがってたの知ってたから気分だけでも味わえないかなって思ってさ。まぁあれだよ、信じる者は救われるってやつ。」
無理のある発想だが、昴が千珠琉のことを想って真剣に考えてくれたんだろうということは伝わった。そもそもこの誘いがなければ、いまだに会うきっかけが掴めなかったはずだ。
(昴は考えくれたのに。残りの時間を大事にしなきゃいけないのに…文句言って最低だ、私。)
「…昴…ありがと。…信じる。」
千珠琉がそう言うと昴はまた自転車を進めた。流れ星を見ているというには少しシュールな()なのが否定できないのは、もちろん昴にもわかっている。
< 33 / 47 >

この作品をシェア

pagetop