さよなら、坂道、流れ星
「“願い事は口に出したら叶わない”なんて言わなきゃ良かった。」
「………」
「チズ…ずっと自分に言い聞かせてるだろ。」
昴は千珠琉の目をじっと見て聞いた。
「言ってる意味がよくわかんない…」
「それ言ったの…父さんが死んでしばらくした頃だっただろ?」
「うん…。」
中学の頃の記憶が頭を(かす)める。
「猫…ルルのこともあって、チズが自分の願いは叶わないって泣いてて…叶わなかったのは仕方ないことなんだって言いたくて、それであんなこと言ったけど、そのせいで逆に…口に出した願いごとは絶対に叶わないって思うようになっただろ?」
昴の言っていることは当たっている。
「父さんもルルも、自分が願いごとを口に出したからいなくなった…って思ってるところ、あるよな。俺にはずっとそう見えてるんだけど。」
「…それは…」
ずっと胸の奥につかえていたものだった。
「それがチズを苦しめ続けてるってわかってたんだ。なんていうか…呪いみたいに…」
「そんな…でも…」


———じゃあ願いごとはどうしたら叶うの?


胸の奥につかえていたものは、心の支えでもあった。今、それが取り払われようとしている。
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