さよなら、坂道、流れ星

第12話 拠り所

気づいたら頬に生温かいものがつたっていた。
「チズ…泣いてる?」
昴に尋ねたれ、首を横に振った。
それでも涙は流れ続けている。
「泣いてない…よ…」
「泣いてるよ。涙流れてる。」
昴の親指が涙に触れた。
自転車に座る昴が、隣に立っている千珠琉の顔を覗き込む。
「父さんのことも、ルルのことも、チズのせいじゃないよ。」
昴の優しい声色が、涙に触れる親指が、温かい反面とても残酷だ。
千珠琉はコクコクと(うなず)く。
「…わかっ…てるけど…変…だね、これ…涙が止まらない…」
「チズ…」
慰めて欲しいわけではない。哀れんで欲しいわけでもない。ただ、教えて欲しいと思っている。
「…ねえ…すばる…」
「ん?」

「———だったら、私の願いはどうしたら叶うの?」
過去のことも、現在(いま)のことも、どこに気持ちを落ち着かせたら良いのかわからなくなってしまった。
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