さよなら、坂道、流れ星
「必死でお願いしたんだ、朱代さんに。だから今まで3年間は引っ越さずに済んだ。ただ、その時に“いつかは引っ越す”って約束したから今回は引っ越すことにした。」
本当は3年前に離れ離れになっていたかもしれないという事を知り、千珠琉は驚きを隠せなかった。同時に気づいたのは中二の冬前といえば、昴が七瀬先輩と付き合っていた頃だということだ。
「…な、七瀬先輩と離れたくなかったから…?」
千珠琉の質問に、昴はハァ…と小さく溜息を吐《つ》いた。
「話聞いてた?“チズのこと考えて”って言ったんだけど。」
「私のことって…」
「俺が、幼馴染として—友達のまま—引っ越そうって決意してんのに、慎之介に告られてんだもんな。」
「なにそれ、全然わかんない…」
(だいたいあれは昴に言われなくてもすぐ断るつもりだったし…)
「あの時引っ越してたら今頃すげー後悔してたと思うって話。」
千珠琉の頭の上に「?」が浮かぶ。

「チズ」
昴がまた千珠琉の目をじっと見て、手をギュッと握った。
「チズの一番の願い、言ってみて。」
握られた手に千珠琉の鼓動が少し早くなっている気がする。
「だから、引っ越さないで。」
「それは無理だけど、チズの一番の願いは叶えられるよ。」
「私の一番の願いごとって…」
千珠琉の頭に一つの願いごとが浮かんだ。

“ 昴とずっと仲良く一緒にいられますように”
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