トカゲの腹の中には愛と死が眠る
彼女への気持ち
あの日から数日が経った
私の中で彼女は、珍しく興味をそそられた女性と言った程度の感覚で、日々の生活の中で、あまり思い出したり考える事はなかった。
そんな時に彼女から連絡を貰い、仕事終わりに会う事になった。
日本最大の金融街に有る高級デパートで待ち合わせをした。
此処なら喫茶店やレストランも有るし、高級ブランド品から日用品まで何でも売ってる。
いくらでも観るものが有るし、到着時間が前後しても何の苦にもならないからだ。
大抵の女性は遅れて来るし、特別急ぐ必要も無いのだけど、万が一に時間を厳守するタイプだと自分の品格が下がる事になる。
彼女の前では、彼女にとっての理想の男で居続ける事が、自分に出来る彼女への奉仕なので、彼女に幻滅される様な真似は出来ない。
夕方に待ち合わせをして私は時間に余裕を持って待ち合わせ場所に向かった。
移動中にリサから連連絡が有り、遅れると言う事なので、私は好きなブランド服を見たりレストランやカフェを見て店内の雰囲気を確認したりした。
女性と待ち合わせをすると、会うまでの無駄に消費される時間で、その人への思い入れの強さが分かる。
この時間を、苦に感じるか感じないかで自分の心を知ることが出来る。
さすがに会うのが2度目なのと、遅れて来る事を想定して居たのでイラつく事は無かったけど、彼女が来るのを待ち侘びる感覚でも無かった。
自分の時間を過ごして、遅れて来た事を怒らなければ、自分の評価が彼女の中で勝手に上がる。
良い男としての立ち回りをそつ無くやってのけ、男としての価値を高めただけだ。
彼女は私を見つけると飛びついて抱きしめて来た
そして待ち合わせ時間に遅れた事を、猫の様に甘えながら謝って来た。
私は人前で飛びつかれた事に驚いたが、条件反射で僅かに気持ち程度の抱擁をして、笑顔で彼女を受け入れた。
彼女は少し飲んでいた様で妙にテンションが高かった。
こんな夕方から既に飲んでるなんて、私と会うまでに女子会でもしていたのだろうか?
もしかしたら仕事終わりに、私と会ってる可能性も一瞬頭をよぎった。
彼女から発せられる夜の女の雰囲気と、酔った状態で待ち合わせに来る状況が、今まで自分が接した事のない都会の繁華街で遊び慣れた女性なんだと、私に思わせた。
エレベーター近くに有る、レストランの写真のパネルを2人で眺めながら何を食べたいか聞いた。
彼女が高級そうな店を避けながら、パネルを指差して「ここ美味しそう」と笑顔で喋る事に安心感と好感を持った。
私が家族でよく行っていたデパートのレストラン階に有る洋食屋のパネルを指差して、昔家族でよく来てた事を言って「まだ有ったんだ。懐かしい」と言った。
彼女は、「此処に行きたい」と言うので懐かしのレストランに2人で入った。
少しだけオシャレなファミリー向けレストランうとらんでお子様ランチも有る店だが、デパートに出店してるだけ有ってクオリティーは高い。
衛生面的な事から外食嫌いの私が、安心して食べれる数少ない店のひとつだ。
私は中でもホタテのフライが好きで、此処に来ると必ずシーフードフライを頼んでいたし、今回も同じメニューを頼んだ。
リサが既に酒が入って居た事もあり、私もビールを頼み、少しのアルコールを嗜みながら食事を楽しんだ。
彼女は良く笑う人で、居心地の良い状態になると水を得た魚の様に、次から次に会話が弾む。
私は無理に話さなくても退屈を感じる事はないし、会話に困る様なタイプではない。
相手が話さなければ、幾らでも自分から会話を振る事が出来るのだけど、会話が途切れる事なく続き、その会話が全て楽しい感覚だった。
リサは、私が出会った事がないタイプで、人生観や生きて来た境遇の全てが私とは違うのが面白かったのだろう。
それに加えて、私の事にも興味を持ち適度に聞いてくる気の使い方だったりは、さすが職業として多くの人と会話してるだけは有ると思った。
それらが自然に出来てて、本当に少しだけ気遣いをしてくれる。
その少しの差が、出来る様で出来ない事で、私は素直に凄いと感じた。
彼女と話すのは楽しく、自分の会話能力向上にも役立つ。
彼女と時間を共有する事で、多くの事を得れる事が本当に有難いと感じた。
食事を終えレストランを出ると、リサがタバコを吸いたいと言うので喫煙ルームに移動した。
私はタバコを吸わないので部屋には入らず扉の外で待っていた。
何もする事が無い時間が、やけに長く感じて周囲を見渡してると、私と同じ様に人を待ってる女性が居た。
恐らく彼女も、彼氏がタバコを吸い終わるのを待っているのだろう。
その女性は、うんざりした顔をしていたので、長い時間、ここで彼氏が来るのを待って居るのだろう。
中で電話でもしながらタバコを吸っているのだろうか?
後から待ってるのに、やけに長い時間待ってる気がした。
退屈の苦痛に耐えていると、同じ様に待ってた女性と目が合って「お互いに大変ですね」と、視線で遣り取りした。
きっと、あの女性は喫煙者の彼氏と付き合ってる間に、何回も何回も待ち続けて居るんだろう。
私がリサと会えば、同じ様に退屈な時間を過ごす事になる。
今は良くても、何回も繰り返し待ち続ける事が、自分には出来るのだろうか?と思った。
そんな事を考えてるとリサが、ようやく戻って来た。
彼女は笑顔で「お待たせ」と言って私の腕に絡みついてきた。
彼女は笑顔で、とても楽しそうだ。
私は、彼女から発せられるタバコの臭で、少し気持ち悪くなった。
脳みそにニコチンを補充したリサとデパートを後にして銀座の街を見て回った。
金融街に来るのは金持ちばかりで、高そうな服で着飾ってる人が多い。
リサは、渋谷の若いギャルがよく着ている様な、花柄のキャミソールの上から、日焼け対策の黒い薄手のフードの付いたコートを着ていて、ぱっと見はローブをまとった、魔女か占い師の様な個性的な格好をしてた。
対照的に私は、流行りのスーツ姿で、リサは自分だけ場違いな格好を恥ずかしそうにしてた。
私は、そんなリサを気遣って積極的に話しかけた。
リサと話せる事が楽しかったし、この街では良い女を連れて居るだけで価値が上がる。
彼女は格好は個性的でも、男達が良い女と思う雰囲気の様なものが有った。
ランウェイを歩くモデルの様に、ただ一緒に歩くと言う、何気ない日常の動作で人の目を惹きつける立ち振る舞いが出来る女性だ。
彼女は一緒に居るだけで、周囲からの評価を上げてくれるタイプの女性だ。
滲み出る都会の夜の女の雰囲気と、高価な女を前面に出しない慎み深さ、それらを個性的な衣装で隠してる雰囲気が、上手い具合に調和されてた。
普通じゃないけど気取って無い見え方が、頑張れば手が届きそうな高価な品の様で、1番口説きたくなる女性感が有った。
男がもしも浮気するなら、こう言う女性とするんだろうなと思わす魅力があった。
酔ったリサと公園に着いた。
公園と言っても大都会のビルに囲まれたベンチと木が植えてあるだけの休憩スペースと言った所だ。
すぐ前には大通りが有ってバスのクラクションやスーパーカーの排気音がけたたましく鳴り響く。
それでも、この繁華街では静かな方だろう
私は酔いすぎると気持ち悪くなるが、彼女は酔って居て、人が変わった様に、妙に明るく良く喋った。
歩くのが遅く、私に体重をかけて寄り添ってくるだけで、煩わしさを一切感じなかった。
彼女が、お酒を飲みすぎた事を謝罪して来て、お金も返すと言って来たので、私の不快感も消えた。
あくまで私の想像ではあるのだけど、夜の世界でお酒を飲んで男性と話す仕事してるから、彼女にとってこの程度の酔いは日常なんだろうと思った。
お金に関しても金銭感覚が一般人と違うのは理解して居たし、こっちの気持ちを考えてくれてるのが伝わった。
ただ、かなり酔ってるのに会話が成立してるのが、酔った演技をしてる気もして、やはり油断ならない上手な女性という警戒感を私に芽生えさせた。
その警戒する気持ちは、自分に害を与えるものでは無く、相手の知能に対する尊敬や敬意に近いもので、私はリサに対して好感を持って居た。
私は教授の息子と言う事もあり、子供の頃から大人より知能が高かった。
学校の先生に、勉強や公式の説明の仕方を教えて居たくらいなので、大抵の人を無意識的に、下に見る傾向が有った。
知力と言う部分で自分より優れてる人は滅多に居ないと思って居たので、私に好感を持たせて尊敬の念を抱かせる彼女の事を、数年に1人出会えるか出会えないかのすごい人だと感じて嬉しかった。
リサは、今まで自分が真面目な恋愛しか、した事がなく、お酒の勢いで淫らに男と遊ぶ様な女ではないと、強く主張して来た。
すっかり遊び人認定した私の誤解を解こうと思ったのか、元彼の事を話し始めた。
リサは夜の営みもない状態で、収入がろくに無い元彼と、5年間も同棲して居たと言うのだ。
自分の家に転がり込んで来た彼を追い出せず、時間を無駄にしたと怒りと悲しみが混じった表情を滲ませた。
誰とも同棲した事が無い私にしたら20歳そこそこで、男と同棲するなど考えられない。
ましてや5年間も同棲してたなんて、良くお互いの親が許したなぁと不思議に感じた。
でも、リサが男女の関係とは違う感覚で、元彼と同棲してたと言う話には信憑性が有った。
私と初めて一夜を共にした時に、彼女がとても喜んで居たからだ。
きっと色々と我慢し傷付きながら生きて来たんだろうと感じた。
そう思うと、私とはまるで別次元の人生を歩んで来た彼女の頑張りに尊敬を感じて、愛しい感情が芽生えた。
ついさっきまでは、人に頼る気満々のリサの立ち振る舞いに、迷惑感を抱いて居たのに、急に愛情の様なモノを感じた。
彼女の元彼に対する愛情と優しさの様なものに好感を感じたのだと思う。
それは、私自身にとっても不思議な感覚だった。
先まで迷惑で煩わしいと感じて居て、リサの事を嫌って居たのに、急に愛しくて好きになった様な感覚に変わったのだ。
リサが僕の事を好きなのは良く分かって居たので、僕は何一つ遠慮する事なく、彼女を強く抱きしめた。
自分が嫌なら別れるし、自分が好きなら側に居たい。
自分が思うがままに、したい様にリサを抱きしめた。
彼女の頭に、頬ずりしながら優しく「ヨシヨシ」と言って慰めた。
リサは涙を拭きながら僕を強く抱きしめた。
僕もリサを強く抱きしめると、彼女の体温と香りが伝わった。
彼女の匂いは、タバコを吸ってるからか、お香の様な深い甘みと煙たさが混じった感じで、一言で言い表せば魔女とか、顔を隠すイスラム教徒の女性が漂わせてる様な、香りがした。
彼女の妖しい雰囲気そのものの香りで、あまり普通の人は漂わせない匂いが漂ってた。
リサの体温を感じていると、居心地が良くて僕はずっと彼女を抱きしめてた。
彼女は何も喋らなかったし、僕も喋る事が思い浮かばなかった。
リサが酔っ払った時に、最悪の場合は、嫌々ながらも彼女を家まで送ったり、ホテルに泊める覚悟もして居た。
最悪の状況を想定して、散々嫌な思いを感じてたから、今が凄く心地よい状況だった。
この場で彼女を抱きしめたまま、時間がどれだけ経って終電を逃そうが、どうにでもなる。
その安心出来る状態が、めったに感じることの無い安らぎを、僕にもたらした。
彼女抱きしめてる状態の今が、とても幸せに感じられた。
今、感じてる心地良さのせいで、それまでの不快感も、彼女に対する失望感も、嘘の様に無かった事になった。
僕はリサの事が愛しくて堪らなくなったので、「今日は一緒に居てくれる?」と上目遣いで甘えながら言った。
リサも優しく甘えた声で「いいよ」と言ってくれたので、僕の家に連れて行く事にした。
今いる場所からは、彼女の家より僕の家の方が近いからだ。
私の中で彼女は、珍しく興味をそそられた女性と言った程度の感覚で、日々の生活の中で、あまり思い出したり考える事はなかった。
そんな時に彼女から連絡を貰い、仕事終わりに会う事になった。
日本最大の金融街に有る高級デパートで待ち合わせをした。
此処なら喫茶店やレストランも有るし、高級ブランド品から日用品まで何でも売ってる。
いくらでも観るものが有るし、到着時間が前後しても何の苦にもならないからだ。
大抵の女性は遅れて来るし、特別急ぐ必要も無いのだけど、万が一に時間を厳守するタイプだと自分の品格が下がる事になる。
彼女の前では、彼女にとっての理想の男で居続ける事が、自分に出来る彼女への奉仕なので、彼女に幻滅される様な真似は出来ない。
夕方に待ち合わせをして私は時間に余裕を持って待ち合わせ場所に向かった。
移動中にリサから連連絡が有り、遅れると言う事なので、私は好きなブランド服を見たりレストランやカフェを見て店内の雰囲気を確認したりした。
女性と待ち合わせをすると、会うまでの無駄に消費される時間で、その人への思い入れの強さが分かる。
この時間を、苦に感じるか感じないかで自分の心を知ることが出来る。
さすがに会うのが2度目なのと、遅れて来る事を想定して居たのでイラつく事は無かったけど、彼女が来るのを待ち侘びる感覚でも無かった。
自分の時間を過ごして、遅れて来た事を怒らなければ、自分の評価が彼女の中で勝手に上がる。
良い男としての立ち回りをそつ無くやってのけ、男としての価値を高めただけだ。
彼女は私を見つけると飛びついて抱きしめて来た
そして待ち合わせ時間に遅れた事を、猫の様に甘えながら謝って来た。
私は人前で飛びつかれた事に驚いたが、条件反射で僅かに気持ち程度の抱擁をして、笑顔で彼女を受け入れた。
彼女は少し飲んでいた様で妙にテンションが高かった。
こんな夕方から既に飲んでるなんて、私と会うまでに女子会でもしていたのだろうか?
もしかしたら仕事終わりに、私と会ってる可能性も一瞬頭をよぎった。
彼女から発せられる夜の女の雰囲気と、酔った状態で待ち合わせに来る状況が、今まで自分が接した事のない都会の繁華街で遊び慣れた女性なんだと、私に思わせた。
エレベーター近くに有る、レストランの写真のパネルを2人で眺めながら何を食べたいか聞いた。
彼女が高級そうな店を避けながら、パネルを指差して「ここ美味しそう」と笑顔で喋る事に安心感と好感を持った。
私が家族でよく行っていたデパートのレストラン階に有る洋食屋のパネルを指差して、昔家族でよく来てた事を言って「まだ有ったんだ。懐かしい」と言った。
彼女は、「此処に行きたい」と言うので懐かしのレストランに2人で入った。
少しだけオシャレなファミリー向けレストランうとらんでお子様ランチも有る店だが、デパートに出店してるだけ有ってクオリティーは高い。
衛生面的な事から外食嫌いの私が、安心して食べれる数少ない店のひとつだ。
私は中でもホタテのフライが好きで、此処に来ると必ずシーフードフライを頼んでいたし、今回も同じメニューを頼んだ。
リサが既に酒が入って居た事もあり、私もビールを頼み、少しのアルコールを嗜みながら食事を楽しんだ。
彼女は良く笑う人で、居心地の良い状態になると水を得た魚の様に、次から次に会話が弾む。
私は無理に話さなくても退屈を感じる事はないし、会話に困る様なタイプではない。
相手が話さなければ、幾らでも自分から会話を振る事が出来るのだけど、会話が途切れる事なく続き、その会話が全て楽しい感覚だった。
リサは、私が出会った事がないタイプで、人生観や生きて来た境遇の全てが私とは違うのが面白かったのだろう。
それに加えて、私の事にも興味を持ち適度に聞いてくる気の使い方だったりは、さすが職業として多くの人と会話してるだけは有ると思った。
それらが自然に出来てて、本当に少しだけ気遣いをしてくれる。
その少しの差が、出来る様で出来ない事で、私は素直に凄いと感じた。
彼女と話すのは楽しく、自分の会話能力向上にも役立つ。
彼女と時間を共有する事で、多くの事を得れる事が本当に有難いと感じた。
食事を終えレストランを出ると、リサがタバコを吸いたいと言うので喫煙ルームに移動した。
私はタバコを吸わないので部屋には入らず扉の外で待っていた。
何もする事が無い時間が、やけに長く感じて周囲を見渡してると、私と同じ様に人を待ってる女性が居た。
恐らく彼女も、彼氏がタバコを吸い終わるのを待っているのだろう。
その女性は、うんざりした顔をしていたので、長い時間、ここで彼氏が来るのを待って居るのだろう。
中で電話でもしながらタバコを吸っているのだろうか?
後から待ってるのに、やけに長い時間待ってる気がした。
退屈の苦痛に耐えていると、同じ様に待ってた女性と目が合って「お互いに大変ですね」と、視線で遣り取りした。
きっと、あの女性は喫煙者の彼氏と付き合ってる間に、何回も何回も待ち続けて居るんだろう。
私がリサと会えば、同じ様に退屈な時間を過ごす事になる。
今は良くても、何回も繰り返し待ち続ける事が、自分には出来るのだろうか?と思った。
そんな事を考えてるとリサが、ようやく戻って来た。
彼女は笑顔で「お待たせ」と言って私の腕に絡みついてきた。
彼女は笑顔で、とても楽しそうだ。
私は、彼女から発せられるタバコの臭で、少し気持ち悪くなった。
脳みそにニコチンを補充したリサとデパートを後にして銀座の街を見て回った。
金融街に来るのは金持ちばかりで、高そうな服で着飾ってる人が多い。
リサは、渋谷の若いギャルがよく着ている様な、花柄のキャミソールの上から、日焼け対策の黒い薄手のフードの付いたコートを着ていて、ぱっと見はローブをまとった、魔女か占い師の様な個性的な格好をしてた。
対照的に私は、流行りのスーツ姿で、リサは自分だけ場違いな格好を恥ずかしそうにしてた。
私は、そんなリサを気遣って積極的に話しかけた。
リサと話せる事が楽しかったし、この街では良い女を連れて居るだけで価値が上がる。
彼女は格好は個性的でも、男達が良い女と思う雰囲気の様なものが有った。
ランウェイを歩くモデルの様に、ただ一緒に歩くと言う、何気ない日常の動作で人の目を惹きつける立ち振る舞いが出来る女性だ。
彼女は一緒に居るだけで、周囲からの評価を上げてくれるタイプの女性だ。
滲み出る都会の夜の女の雰囲気と、高価な女を前面に出しない慎み深さ、それらを個性的な衣装で隠してる雰囲気が、上手い具合に調和されてた。
普通じゃないけど気取って無い見え方が、頑張れば手が届きそうな高価な品の様で、1番口説きたくなる女性感が有った。
男がもしも浮気するなら、こう言う女性とするんだろうなと思わす魅力があった。
酔ったリサと公園に着いた。
公園と言っても大都会のビルに囲まれたベンチと木が植えてあるだけの休憩スペースと言った所だ。
すぐ前には大通りが有ってバスのクラクションやスーパーカーの排気音がけたたましく鳴り響く。
それでも、この繁華街では静かな方だろう
私は酔いすぎると気持ち悪くなるが、彼女は酔って居て、人が変わった様に、妙に明るく良く喋った。
歩くのが遅く、私に体重をかけて寄り添ってくるだけで、煩わしさを一切感じなかった。
彼女が、お酒を飲みすぎた事を謝罪して来て、お金も返すと言って来たので、私の不快感も消えた。
あくまで私の想像ではあるのだけど、夜の世界でお酒を飲んで男性と話す仕事してるから、彼女にとってこの程度の酔いは日常なんだろうと思った。
お金に関しても金銭感覚が一般人と違うのは理解して居たし、こっちの気持ちを考えてくれてるのが伝わった。
ただ、かなり酔ってるのに会話が成立してるのが、酔った演技をしてる気もして、やはり油断ならない上手な女性という警戒感を私に芽生えさせた。
その警戒する気持ちは、自分に害を与えるものでは無く、相手の知能に対する尊敬や敬意に近いもので、私はリサに対して好感を持って居た。
私は教授の息子と言う事もあり、子供の頃から大人より知能が高かった。
学校の先生に、勉強や公式の説明の仕方を教えて居たくらいなので、大抵の人を無意識的に、下に見る傾向が有った。
知力と言う部分で自分より優れてる人は滅多に居ないと思って居たので、私に好感を持たせて尊敬の念を抱かせる彼女の事を、数年に1人出会えるか出会えないかのすごい人だと感じて嬉しかった。
リサは、今まで自分が真面目な恋愛しか、した事がなく、お酒の勢いで淫らに男と遊ぶ様な女ではないと、強く主張して来た。
すっかり遊び人認定した私の誤解を解こうと思ったのか、元彼の事を話し始めた。
リサは夜の営みもない状態で、収入がろくに無い元彼と、5年間も同棲して居たと言うのだ。
自分の家に転がり込んで来た彼を追い出せず、時間を無駄にしたと怒りと悲しみが混じった表情を滲ませた。
誰とも同棲した事が無い私にしたら20歳そこそこで、男と同棲するなど考えられない。
ましてや5年間も同棲してたなんて、良くお互いの親が許したなぁと不思議に感じた。
でも、リサが男女の関係とは違う感覚で、元彼と同棲してたと言う話には信憑性が有った。
私と初めて一夜を共にした時に、彼女がとても喜んで居たからだ。
きっと色々と我慢し傷付きながら生きて来たんだろうと感じた。
そう思うと、私とはまるで別次元の人生を歩んで来た彼女の頑張りに尊敬を感じて、愛しい感情が芽生えた。
ついさっきまでは、人に頼る気満々のリサの立ち振る舞いに、迷惑感を抱いて居たのに、急に愛情の様なモノを感じた。
彼女の元彼に対する愛情と優しさの様なものに好感を感じたのだと思う。
それは、私自身にとっても不思議な感覚だった。
先まで迷惑で煩わしいと感じて居て、リサの事を嫌って居たのに、急に愛しくて好きになった様な感覚に変わったのだ。
リサが僕の事を好きなのは良く分かって居たので、僕は何一つ遠慮する事なく、彼女を強く抱きしめた。
自分が嫌なら別れるし、自分が好きなら側に居たい。
自分が思うがままに、したい様にリサを抱きしめた。
彼女の頭に、頬ずりしながら優しく「ヨシヨシ」と言って慰めた。
リサは涙を拭きながら僕を強く抱きしめた。
僕もリサを強く抱きしめると、彼女の体温と香りが伝わった。
彼女の匂いは、タバコを吸ってるからか、お香の様な深い甘みと煙たさが混じった感じで、一言で言い表せば魔女とか、顔を隠すイスラム教徒の女性が漂わせてる様な、香りがした。
彼女の妖しい雰囲気そのものの香りで、あまり普通の人は漂わせない匂いが漂ってた。
リサの体温を感じていると、居心地が良くて僕はずっと彼女を抱きしめてた。
彼女は何も喋らなかったし、僕も喋る事が思い浮かばなかった。
リサが酔っ払った時に、最悪の場合は、嫌々ながらも彼女を家まで送ったり、ホテルに泊める覚悟もして居た。
最悪の状況を想定して、散々嫌な思いを感じてたから、今が凄く心地よい状況だった。
この場で彼女を抱きしめたまま、時間がどれだけ経って終電を逃そうが、どうにでもなる。
その安心出来る状態が、めったに感じることの無い安らぎを、僕にもたらした。
彼女抱きしめてる状態の今が、とても幸せに感じられた。
今、感じてる心地良さのせいで、それまでの不快感も、彼女に対する失望感も、嘘の様に無かった事になった。
僕はリサの事が愛しくて堪らなくなったので、「今日は一緒に居てくれる?」と上目遣いで甘えながら言った。
リサも優しく甘えた声で「いいよ」と言ってくれたので、僕の家に連れて行く事にした。
今いる場所からは、彼女の家より僕の家の方が近いからだ。