The previous night of the world revolution~P.D.~
「ライブ以外で、ナマの『frontier』を見るの…何気に初めてだったな」

と、ルルシー。

思いの外、満足したようだ。

「ね?良い機会だったでしょう?」

「そうだな…。やっぱりあれほどの有名人ともなると、オーラが違うな」

俺と一緒ですね。

「当然のことなんだけど…ああいう有名人でも、俺達と同じ人間なんだなって思ったよ」

ほう。それはまた面白い感想だ。

普段は動画とか雑誌とか、実物を見たとしてもステージの上に限られていたから。

何処か遠い、別世界の人間に見えたのかもしれないが。

彼らもまた、俺達と同じ世界、同じ時代に生きる…普通の人間だ。

まぁ、有名人であることは事実ですけど。

「…それにしても、ルトリアは大丈夫なんだろうか」

ルルシーは首を傾げて言った。

あ、やっぱりルルシー、分かってなかったのか。

「めちゃくちゃ緊張してたかと思ったら、ルレイアを見た途端正気に戻って…。なんか、凄く情緒不安定な様子だったけど…」

ルトリアさんが本番前に挙動不審、情緒不安定になるのはいつものことなんですけど。

「あれは、別に俺を見て正気に戻った訳じゃないと思いますよ」

あれはあれで、めちゃくちゃ緊張していたはずだ。

「え?でも、普通に喋ってたじゃないか」

「あれは多分、ただでさえ目一杯緊張していたところに、いきなり俺が現れて…緊張が限界を超えて、一周回って冷静になっただけですよ」

人間、あまりに緊張が過ぎると、むしろ静かになる。

ルトリアさんのあれは、そういう状態だ。

何も、緊張が解けた訳じゃない。

「マジかよ…。大丈夫なのか?本番までもう時間ないだろ…」

これが別の人なら、こんな調子で本番は大丈夫なのかと心配になるところだが…。

「大丈夫ですよ、ルトリアさんなら」

本番前は、いつもあの調子で大騒ぎだけど。

ステージに立つと、途端に人が変わるから。

スイッチが入ると言うか…むしろステージに立った瞬間、正気に戻るんでしょうね。

その点は、俺は全く心配していない。

あの人なら大丈夫だ。

良くも悪くも…俺に似ているところがあるからな。

肝が小さいように見えて、意外と図太いところもあるんですよ。

それに。

「仲間達も…他の『frontier』メンバーもついてますからね」

ルトリアさんは一人じゃない。頼もしい仲間に囲まれている。

俺のようにな。

仲間達に支えられて、きっと素敵なステージを見せてくれるよ。

いつものようにな。

だから、俺は心配せず。

スポンサーとしてではなく、一人の観客として…今回のステージを楽しませてもらうとしよう。

「そろそろ、待ち合わせの時間ですね。行きましょう」

「分かった」

アイズやアリューシャ、シュノさん達が待っている。

ルリシヤとルーチェス、それにルーチェス嫁も来てるんだっけ?

ルトリアさんがルクシーさん達に支えられているように。

俺も、これだけたくさんの仲間がいる。

緊張するステージだろうと、地獄の三丁目だろうと…仲間がいれば無敵ってね。
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