The previous night of the world revolution~P.D.~
――――――…その頃、帝国騎士団隊舎では。





「…そうか…。それは…残念だ」

「えぇと…申し訳ありません…」

「…」

…先程から。

俺の上司であり、帝国騎士団団長であるオルタンス殿は、両手を組んでしょんぼりと俯いていた。

…えぇと。

何だか悪いことをしてしまったみたいで、とても申し訳ない…のだが。

こればかりはその…他にどうしようもない…と言うか。

…我慢してもらうしかない、と言うか。

何と言って慰めたら良いものかと、頭を悩ませていたところに。

「…ん?ルーシッド、いたのか」

「あ…。アドルファス殿…」

こちらも俺の上司であり、帝国騎士団三番隊隊長のアドルファス殿が、オルタンス殿の執務室にやって来た。

アドルファス殿も、オルタンス殿に用事があるのだろう。片手に書類を持っていた。

「悪いな。取り込み中だったか」

「いえ、その…。俺の用事はその…一応終わってはいるのですが」

「あ?」

「その…オルタンス殿が、まだあまり…納得して頂けてないようで…」

「…」

アドルファス殿は、しょんぼりと落ち込むオルタンス殿を見つめた。

そして、一言。

「何やってんだ?こいつ」

アドルファス殿にとっても上司のはずなのだが、既にこいつ呼ばわり。

それだけ気心の知れた仲…ということにしておこう。

「実は、その…。えぇと、オルタンス殿がこうなったのは、自分の責任でして…」

「お前が?何をしたんだ?」

…。

…アドルファス殿にも、話しておくべきだろうな。

不在中は、彼にも世話になるだろうし…。

「来週から三日間、暇をいただこうと思いまして…」

「お前がか?珍しいな」

はい。

「突然のことで申し訳ないのですが…」

「別に良いだろ。お前、普段から働き過ぎなくらいだからな。今はそれほど忙しい訳でもないし、休めるうちに休んでおけ」

「ありがとうございます」

自分は休みを取らないのに、お前だけちゃっかり休むのか、と嫌味の一つでも言われてもおかしくなかったが。

アドルファス殿は、あっけらかんとしてそう言ってくれた。

有り難いことだ。

これがアストラエア殿やユリギウス殿だったら、眉の一つはしかめられたことだろう。

「ひいては、アドルファス殿にお願いしたいことが…」

「何だ?」

「留守中のことは、副隊長に任せてありますが…。万が一俺の不在中、四番隊に何か有事がありましたら…そのときは…」

「あぁ、そういうことか。分かったよ」

厚かましい頼み事だったが、こちらもあっさりと引き受けてくれた。

何もない…とは思うが、万が一ということも有り得る。

アドルファス殿に託しておけるなら、心強い。

あとは…。

…オルタンス殿が、後腐れなく送り出してくれたら、非常に助かるのだが。
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