The previous night of the world revolution~P.D.~
「羨ましい…。俺はお前が心底羨ましい、ルーシッド」

「は、はぁ…」

そう言われても…。どうにもしてあげられないと言いますか…。

納得してもらうしかないのですが…。

「ルレイアと一緒に旅行に行くなど…。羨ましい限りだ」

「いえ…。別にルレイア殿と旅行に行く訳では…」

「まさかお前に先を越されるとはな。真の敵は味方にあり、とはよく言ったものだ」

誰が言ったんですか、そんなこと。

それから…俺はルレイア殿と旅行に行くのではない。

「オルタンスがこうなってるってことは、ルレイア絡みなんだろうと思ってたが…。旅行?」

事情を知らないアドルファス殿が、首を傾げた。

当然の疑問である。

「はい。実は…来週の休暇を使って、旅行に行こうと思っていまして」

「へぇ。何処に?」

「箱庭帝国です。『青薔薇委員会』の委員長、ルアリス殿から直々に、招待状をいただきまして」

「あぁ、そういうことか」

理解していただけたようで、何よりです。

「箱庭帝国で大きな式典が開かれるので、是非参加して欲しいと頼まれたのです」

ルアリス殿から、招待状が同封された手紙を受け取った。

ルアリス殿とは、箱庭帝国の革命時に知り合った。

あのときの縁を、ルアリス殿は未だに忘れていないらしい。

有り難い誘いだ。

断る理由も特にないので、今回は参加させてもらうことにした。

…で、その為の休暇をもらおうと、こうしてオルタンス殿の執務室にやって来て。

休暇そのものは、驚くほどあっさりともらえたのだが…。

ルアリス殿に誘われて箱庭帝国に旅行に行くと言うと、オルタンス殿はこのように、頭を抱えてしまった。

…今更だが、言わなければ良かったと後悔。

ルアリス殿から誘いをもらったのは、当然俺だけではない。

同じく『青薔薇十字軍』と共に、箱庭帝国の革命に協力した、『青薔薇連合会』の面々も。

俺と同じように、招待状を受け取っているそうだ。

勿論、その中にはルレイア殿も含まれる。

ルレイア殿がいると聞いて、オルタンス殿は…何と言うか、スイッチが入ってしまったらしい。

やっぱり言わなければ良かった。

「…ルレイアが絡むと、途端にこれだ。面倒臭い奴だな」

アドルファス殿が一刀両断。

「ルーシッド、この馬鹿のことは気にせず行ってこいよ」

「は、はい…」

「俺も行きたい…」

というオルタンス殿の呟きは、申し訳ないが聞こえなかったことにした。

さすがに、オルタンス殿は滅多なことがない限り、ルティス帝国を留守にする訳にはいかないので。

「…ルーシッド。こんなことを言うのは無粋かもしれないが」

と、アドルファス殿。

「はい?」

「可能なら、『青薔薇連合会』の様子を探ってきてもらえるか」

…これは意外な頼みだった。

「『青薔薇連合会』の様子…ですか」

「あいつら、まだ帝国自警団にちょっかい出されてるんだろうから。今『青薔薇連合会』がどんな状況なのか、知っておきたい」

あぁ、成程。

「まぁ、箱庭帝国の旅行に参加するくらいなら、それなりに余裕はあるんだろうが…」

帝国自警団が『青薔薇連合会』に何をしているのか。

立ち入り調査をしたことまでは知っているが、それ以降のことは知らない。

不干渉の原則がある限り、こちらから口を挟む訳にもいかない。
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