The previous night of the world revolution~P.D.~
「ひゃっほ〜い!雲の上!アリューシャ今、雲の上にいる!」

窓にべったりとくっついて、アリューシャは超ハイテンション。

「人が豆粒だぜ、豆粒!すげー偉くなった気分!王様だぜアリューシャ!おめーら!アリューシャの言うことを聞け〜っ!」

「…うるさい奴だな、お前は…」

ピキピキ、とこめかみに血管を浮き立たせるルルシー。

ルルシーったら、短気なんだから。

「まぁまぁ、良いじゃないですか。ここには俺達しかいない訳ですし」

俺達幹部組で、プライベートジェットを貸し切った。

お陰で、アリューシャがどれほど騒いでも、他の乗客の迷惑になることはない。

そもそも、この飛行機に他の乗客、いませんから。

俺も心置きなくくつろげるってものですよ。

そして。

「実は私、飛行機乗るの初めてなんだよね」

「そうなんですか?」

「うん。初めての飛行機がプライベートジェットなんて。贅沢だな〜」

「そうですか…?僕はよく、ベルガモット王室所有の旅客機に乗ってましたけど…」

「それはルーチェス君だけだよ〜」

アンブローシア夫妻も、飛行機の旅を楽しんでいらっしゃった。

王族専用機に慣れたルーチェスにとっては、プライベートジェットくらいじゃ感動しないだろうな。

「久し振りの故郷だな、フューニャ」

「えぇ、楽しみです。…お姉ちゃんは、大丈夫ですか?」

「何がです?」

「だって、箱庭帝国に帰るのは…」

「今更、生まれ故郷に未練はありませんよ。ただの旅行と思って、楽しませてもらいます」

と、クランチェスカ夫妻と、俺の部下の華弦が話していた。

そうか。華弦にとっても生まれ故郷なんだっけ…。

しかも、自分を捨てた故郷だ。

彼女なりに、思うところがあるかと思ったが…。

「姉妹で旅行…。ずっと夢だったんです。また一つ、夢が叶いましたね。ふふふ…」

…心配は要らないようですね。

生まれ故郷に帰るということより、妹と旅行に行けたことの方が嬉しいらしい。

分かる分かる、分かりますよ。

俺だって、ルルシーと旅行に行けるなら、行き先なんて何処でも構いませんから。

シェルドニア王国以外なら、だけど。

「全く…。賑やかな奴らだよ」

溜め息をついて、ルルシーがそう言った。

「良いじゃないですか。初めてですよ?全員揃って旅行なんて」

前に箱庭帝国に行ったときは、ルルシーとルリシヤと俺の三人だけだったし。

こうして皆と一緒に旅行なんて、滅多にない。

なら、この機会を大事にしようじゃないか。

なんか帝国騎士団から、ルーシッドも来るらしいけど。

まぁあいつはどうでも良いな。

「それは、そうだけど…」

「だったら楽しみましょうよ。日々の嫌なことは忘れて。ね?」

「…分かったよ」

そうそう、それで良い。

何だかんだ久し振りだしね。箱庭帝国に行くの。

「ふふ、大きくなってるでしょうね〜、ルアリスの娘」

「!」

しゅばっ、とこちらを振り向くルルシー。

「ちゃんと『美味しく』育ってますかね?会うのが楽しみですね〜」

「…前言撤回だ。俺は旅行を楽しんでる余裕はない。ルレイアの毒牙から、ルアリスの娘を守らないと…」

え?ルルシーあなたは、今何て?

聞こえなかったことにしよう。
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