The previous night of the world revolution~P.D.~
一応ルアリスに呼ばれたから、式典に顔を出しはしたけど。

『青薔薇十字軍』結成10周年と言われても、全然ピンと来ないですね。

ふーん、そうなの?って感じ。

これが『frontier』結成10周年とかだったら、もっと反応が大きいんですけどね。

と、思っていると。

「ルレイア殿、ご無沙汰してます」

噂をすれば何とやら、ルアリスが俺のもとに挨拶しに来た。

珍しく、パリッとした礼服を着ている。

まぁまぁ似合ってるじゃないか。俺の方がよく似合いますけど。

「久し振りですね、ルシード。元気でした?」

「はい…。もう大体予想出来ていましたけど、俺はルアリスです」
 
そうか。

まぁそういうことにしておいてやろう。

「ルレイア殿は相変わらず、お変わりないようで安心しました」

それは皮肉か。

言うようになったじゃないか。元童貞が。

「忙しいところ、わざわざ来て頂いて…感謝しています。今日こんな風にお祝いが出来るのも、『青薔薇連合会』の幹部の皆さんや…フューシャ…じゃなくて、フューニャや、革命に協力してくれた全ての皆さんのお陰です」

オールスター勢揃いですもんね。

そういえば、ルヴィア嫁は一時期箱庭帝国に亡命してたことがあるんだっけ。

一応、ルアリスとも面識があるのだ。

人間、何処に縁が繋がってるか分からないもんだ。

「しかし、何でまた『青薔薇十字軍』の十周年なんか祝うんです?」

「…あのな、ルレイア。もうちょっと気を遣った聞き方をしろ」

え、何で?

俺とルアリスほどの仲になると、何でも遠慮なく聞けるだろう?

「『青薔薇委員会』の設立を祝うなら、まぁ分かりますけど」

『青薔薇委員会』が設立され、箱庭帝国が憲兵局の圧政から抜け出し、新体制になった記念…なら分かるけど。

何故十字軍?

「そうですよね。当然の疑問だと思います…。セトナ様やユーレイリーにも言われました」

でしょうね。

「でも、俺はどうしても…『青薔薇十字軍』の記念を祝いたかったんです」

「あぁ、成程。十字軍時代はまだ童貞だったから、童貞時代の自分を思い出して…」

「…童貞は関係ありません」

何だと?関係ない?

随分生意気なことを言う。

ルアリスといえば童貞、童貞と言えばルアリスだろう。

「そうではなく…。俺にとっては、『青薔薇十字軍』の方が馴染み深くて…」

「あ?」

「箱庭帝国を変える為、この国に革命を起こす為に立ち上がり、共に一つの目的を果たす為に数多くの人々が力を合わせ、協力して悲願を成し遂げた…そのことを、忘れたくないんです」

…とのこと。

ふーん…。

つまり要約すると、やっぱり童貞時代の自分が忘れられないんだな。

「『青薔薇十字軍』を結成してから、この国の全てが変わった。今はもう十字軍はありませんが、俺は今でも、あの革命のときのことを忘れられないんです」

…まぁ、気持ちが分からなくもないが。

「それで、皆に無理を言って…こうやって式典を開いてもらって。ルレイア殿や、他の色々な人に参加してもらって。本当に感謝してます」

「そうですか」

つまるところ。

ルアリスにとって、革命の第一歩だった十字軍の結成を…忘れられない。

忘れたくない、ってことなんだな。

全く…相変わらず甘ちゃんな奴だよ。
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