The previous night of the world revolution~P.D.~
「…ルレイア」

「はい、何ですかお客様」

「これは何なんだ?」

お前は客に何を飲ませようとしてるんだ?

…ブラックコーヒー?ブラックコーヒーなのか?

その割には、コーヒーの香ばしい匂いは全く感じない…。

「何って、ホットミルクですよ」

ホットミルクだと?

この黒々とした液体が、ホットミルク?

「飲んでみてください。美味しいですよ」

「いや…。ちょっと待て。これ…何でこんなに黒いんだ?本当に牛乳か?これ…」

「正しくは、それは牛乳ではありません。ヤギのミルクです」

ルレイアの代わりに、傍に立っていた華弦が答えた。

…これヤギなのか?

ゴートミルクって奴?

俺はゴートミルクなんて飲んだことないけど、何となく臭いがきつそうなイメージ…。

しかし飲んでみると、意外とさらっとして癖もなくて飲みやすい。

まろやかな甘みもあって、かなり美味しい。でも黒い。それだけが意味分からん。

「ヤギのミルクって…こんなに黒いのか…?」

牛乳と同じく、白いんじゃないのか?

何でこんなに真っ黒な…。

「それは一般的に市販されているヤギミルクではなく、シェルドニア王国から輸入したヤギミルクなんです」

「あ、そうなんだ…」

「価格は、1杯1200円を想定しています」

「…高くね?」

いくらヤギ乳だからって、ホットミルクで1杯1200円はぼったくり過ぎだろう。

どんな高級カフェだよ?

「仕方ありません。シェルドニア王国からの輸送費がかなりかかりますから」

「それは分かるけど…」

「それに、その黒いミルクを出すシェルドニアクロチチヤギは、シェルドニア王国でも稀少な動物ですから。生産が少ないんです」

…へぇ。

シェルドニア王国って、そんなヤギいるのか?

その名の通りそのヤギは、黒いミルクを出すんだろう。

で、そのシェルドニア王国でしか取れない稀少な黒いゴートミルクを特別に輸入して、商品として提供すると…。

成程、それらの手間暇を思うと…1杯1200円も仕方ないのかもしれない。

それにしてもホットミルクで1000円越えは高いわ。

「シェルドニア人は、黒い色は嫌いますからね。黒い食材はあまり出回らないんです」

と、華弦。

そうだろうな。

シェルドニア人は、何と言っても白が大好きだもんな。

スーパーに置いてあった食材も、カラフルではあったけど、黒い食材はほとんどなかった。

多分、本能的に黒い色はあまり好きじゃないんだろう。

とことんまで、ルレイアとは趣味が合わない国だ。

「ふーん…。それでブラックホットミルクか…。まぁ不味くはないけど…」

正直、普通にスーパーで売ってる白い牛乳温めて、1杯500円くらいで売った方が売れるんじゃね?とは思う。

口にはしないけど。

すると。

「どうぞ、シュノさん。こちらはミックスジュースです」

「ありがとう」

シュノの前に、黒いガラスのコップが置かれた。

今度はホットミルクではなく、ミックスジュースらしい。

カフェでは定番メニューだよな。ミックスジュース。

…まぁ。

…真っ黒なミックスジュースは、全然定番ではないけどな。
< 163 / 634 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop