The previous night of the world revolution~P.D.~
シュノの前に置かれた黒いグラスには、これまた黒々とした液体が並々と入っていた。

…グロッ…。

何と何をミックスしたら、そんな気色悪いミックスジュースが出来上がるんだ?

「おい…。大丈夫かそれ?腐ってるんじゃないよな…?」

飲んでも大丈夫なんだろうな?

シュノの胃袋に異常をきたす恐れがある。

「大丈夫だよ、凄くトロピカルな良い匂いがする」

シュノは勇敢にもグラスに顔を近づけ、匂いを嗅いでいた。

勇気あり過ぎだろう、シュノ。

とてもトロピカルな色には見えないんだが。それ本当に果物入ってるか?

シュノは特に躊躇うこともなく、黒いストローでミックスジュースを啜った。

…。

…大丈夫か?

すると、シュノの顔がぱっと輝いた。

「どうですか?シュノさん。味の方は」

「美味しい…!ルレイア、これ凄く美味しい」

マジで?

ルレイアを喜ばせようと思って、無理してないか?

「何味なんだ?それ…」

恐る恐る、シュノに聞いてみる。

「色んな果物の味がするよ。りんごと、パイナップル…バナナの味もするかな?」

…至って普通のミックスジュースのようだ。

「正解です。そのミックスジュースに使われている果物は、シェルドニアクロリンゴ、シェルドニアクロパイン、シェルドニアクロバナナ、それからシェルドニアクロシャインマスカットも入っています」

「へぇ〜、そうなんだ。美味しい」

華弦の説明に頷いて、シュノは更にミックスジュースを啜っていた。

…どうやら、お世辞ではなく本当に美味しいらしいな。

でなければ、こんな気持ち悪い色のジュースをごくごく飲めるはずがない。

つーか、シェルドニアってそんな果物あるのか?

何で黒いんだよ。リンゴと言えば赤、パイナップルと言えば黄色、バナナも黄色、シャインマスカットと言えば黄緑だろ?

「ルレ公、アリューシャも飲み物欲しい」

と、ルレイアにせがむアリューシャである。

「分かりました。ではアリューシャには…こちらを」

「おう、さんきゅ!…ごくごく」

アリューシャは、手渡されたそれが何なのか聞くこともなく。

何の躊躇いもなしに、一気に呷っていた。

おい。

お前、もう少し躊躇しろよ。変な飲み物だったらどうすんだ?

…しかし。

「味は如何ですか?」

「おぉ、美味ぇ!何だこれ。メロンソーダ?」

「正解です。そちらはブラックメロンソーダになります」

メロンソーダ。こちらも喫茶店定番メニューだが。

何度も言うが、メロンソーダはそんなに真っ黒な飲み物ではない。

しゅわしゅわと泡の立つソーダも、そこに浮かんでいるアイスクリームも、何もかも真っ黒。

そして。

「ルリシヤには、これを」

「ほう、良い匂いだ。これは?」

「ブラックロイヤルミルクティーです」

「ルレイア師匠、これは何ですか?」

「ルーチェスのは、ブラックキャラメルマキアートです」

「これは美味しいね。カプチーノだね」

「えぇ。アイズのはブラックカプチーノコーヒーです」

あれもこれも。どれもこれも。

飲み物全部、見事に真っ黒であった。
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