The previous night of the world revolution~P.D.~
…段々分かってきたぞ。

ルレイアの言う新感覚カフェっていうのは、もしかして…。

「それじゃ、飲み物も配りましたし…。次はフードメニューに行きますね」

「…なぁ、ルレイア」

「はい?何か?」

「…そのフードメニューっていうのも、もしかして…全部黒いのか?」

「えぇ、勿論!」

そんな当然のように言うなよ。

そうなのか。そういうことなのか。ようやく分かった。

ルレイアの言う、新感覚っていうのは…つまり。

…メニューの全てが真っ黒な喫茶店。

故に、「ブラック・カフェ」。

…そういうことなんだな?

なんつーか…安直だよな。考えることがさ。

ルレイアらしいって言えばらしいんだけど。

「…一応聞いておくけど、それは一部の商品のみが黒くて、他の商品は普通…って訳じゃないんだよな?」

「当然です。カフェの全商品、全メニューが真っ黒です。中途半端は一番良くないですからね」

どやぁ、とドヤ顔のルレイアである。

俺は例え中途半端でも、普通の白いホットミルクが飲みたかったよ。

シェルドニアの謎ヤギミルクじゃなくてさ。

「何なら、店の内装、カーテンや絨毯、テーブル、椅子、皿、ナイフやフォーク、ウェイトレスの制服に至るまで、全てが黒です」

「あ、そ…」

本当に…徹底的に黒を追求した店であるらしい。

嬉しそうに言ってるけど…それってちゃんと売れるのか…?

「その店、本当に流行るのか?」

「え?だってこんなに良い色なんですから、皆喜んで来店するでしょう?」

誰もがお前みたいに黒を好きだと思ったら、大きな間違いだぞ。

中には白を好きな人だっているんだよ。シェルドニア王国の国民とかな。

「『frontier』の夏フェスのとき販売したブラックフード、予想以上に好評でしたからね。これはビジネスチャンスだと思ったんですよ」

やっぱりそうか。

あれに味を占めたんだな?気持ちは分かるが…。

でも、あれは『frontier』が宣伝をしたから売れたのであって、黒い食べ物が万民にウケているからではないのでは?

まだ出店もしていないのに、出鼻を挫くのは気の毒だから言わないが…。

まぁ、ルレイアなりに色々経営戦略を考えた上での出店なのだろうから、そんなに心配はしていない。

他にも、ルレイアが経営してるゴスロリブティックとかも。

誰が買うんだと言うような商品ラインナップだが、あれだって黒字を叩き出している訳で。

…案外世の中には、ルレイアと同じ趣味の人間が多いのかもしれない。

…世も末だな。

「それにほら、こういう奇をてらった奇抜な発想のお店を作ったら、SNS大好きな蝿共がうじゃうじゃ集まってくるでしょう?」

とのこと。

面白いもの見たさってことか?

まぁ、それはあるかもな。

「蝿って言うなよ…」

「最悪食べてもらえなくても良いんです。注文して、写真撮って、拡散して、金払って帰ってくれるんなら、それで」

切ねぇ。

折角商品を提供するなら、美味しいって言って食べて欲しいだろ。

「そういう訳ですから、ルルシーも是非試食してみてください。評判良かったらメニューに入れますから」

「あ、そう…」

「夏フェスで好評だった、ブラックサンドイッチとブラックソフトクリームは、既にメニュー入り決定してるんですけど。それ以外をどうするか考えてるんですよね〜」

…あれ、メニュー入りするのか。

あんな恐ろしい見た目の食べ物が、好評だなんて…。やっぱり世も末だな。
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