The previous night of the world revolution~P.D.~
…分かったよ。

覚悟を決めて、俺もこのオムライス、食べるよ。

その前に、一つ聞かせてもらっても良いだろうか。

「…華弦。この黒い卵は…何を混ぜてるんだ?またカエルの唾液…?」

「いいえ、それはシェルドニアクロヒキガエルの唾液ではありません」

そうなんだ。ちょっと安心した。

そうだよな。いくら天然素材だからって、何でもかんでもカエルの唾液を混ぜるのは気持ち悪いよな。

すると。

「そのオムライスは、何かを混ぜて黒くしたのではありません。元々黒い卵を使用しているんです」

と、華弦が教えてくれた。

へぇ…黒い卵…。

「…そんなのあるのか?」

「はい。シェルドニアクロコモドドラゴンの卵ですね」

おぇぇぇ。

「チキンライスは、シェルドニアクロハシボソガラスの血を混ぜ、使っている肉も同様、シェルドニアクロハシボソガラスの肉です」

もっとおぇぇぇ。

食べてないのに。まだ食べてないのに吐きそうになった。

この…このふわふわとろとろのオムレツが、コモドドラゴンの卵から作られているだと?

あまりに気持ち悪くて、皿をひっくり返したくなる。

理性で何とか堪えているが。

「キモッ…!何でそんなもの使うんだよ!?」

「何でと言われましても…。色々試行錯誤した結果、これが一番美味しかったので…」

料理って、味だけじゃないと思うんだよ。俺。

見た目も大事だし、匂いも大事だし、何より原材料が大事だと思う。

誰がオムライスに、コモドドラゴンの卵を使うよ?

「ちなみに、一皿4000円です」

そして高い。

それオムライスの値段かよ?

「シェルドニアクロコモドドラゴンの卵は、貴重ですからね」

やっぱり原材料の問題なんだな?

もう普通のオムライスにしてくれ。黒くなくて良い。

着色料混ぜても良いから、コモドドラゴンだのカラスの血だのはやめてくれ。

つーか、カラスの肉って食べられるのか…?

俺はドン引きで、自信作のオムライスを全く食べられなかったが。

「もぐもぐ。うめぇ。もぐもぐ」

アリューシャは、口いっぱいにグロオムライスを詰め込んでいた。

「アリューシャ…。大丈夫なのか…?」

「何が?」

「いや、それ…。コモドドラゴンの卵だぞ?」

「ドラゴンの卵?なんか格好良いじゃん」

あっ。

アリューシャ、コモドドラゴンを知らなかった。

「コモドドラゴンっていうのはね、アリューシャ。物凄く大きなトカゲだよ」

と、アイズがアリューシャに教えてやっていた。

そう、ワニみたいなトカゲだよ。

しかし、コモドドラゴンの正体を知っても、アリューシャが気持ち悪がることはなく。

「トカゲ?トカゲは美味いだろ」

「それに、その中身…カラスの肉なんだぞ?」

「カラスも美味いだろ」

平然ともぐもぐ。

…。

…今ばかりは、俺、お前のことめちゃくちゃ逞しいと思ってるよ。

悪いが俺は、このオムライスは食べられなかった。
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