The previous night of the world revolution~P.D.~
ルルシーの執務室に引っ込んでいるものと思っていたのに、突然俺が現れたものだから。

ルルシーは、みすみす姿を現した俺を咎めるような視線で見た。

済みませんね。

ルルシーの気持ちも、シュノさんの気持ちも分かってるんですが。

こうせずにはいられないんですよ。今回ばかりは。

「ルレイア…!何で来たんだ」

「済みません、ルルシー…。でも、呼ばれているのは俺なのに、守られて隠れている訳にはいかないと思いまして」

ましてや、俺のせいで危うく、二人まで捕まるところだったじゃないか。

やろうと思えば出来るんですよ。帝国自警団にも、逮捕権限がありますから。

でも、それをやらせちゃ駄目だ。

ルルシーとシュノさんまで巻き込む訳にはいかない。

しかも、俺は逮捕されるのではない。「保護」されるのだ。

この二つには大きな違いがある。

「あなたと一緒に行きますよ、ブロテさん。それで良いでしょう?」

「…!それは、勿論…」

突然現れた俺が、どれほど抵抗するかと身構えていたのだろう。

俺が、あまりにあっさりと「ついていく」と言ったものだから…ブロテも少し驚いていた。

失礼な。

俺はいつだって大人しくて、聞き分けの良い子ですよ。ねぇ?

しかし、これに異を唱えたのは、勿論。

「おまっ…!馬鹿を言うな!お前を連れて行かせる訳ないだろ!」

「駄目よ、ルレイア!そんな人の言いなりになっちゃ駄目!」

と、叫ぶルルシーとシュノさん。

心配してくれるのは有り難いけど。

「大丈夫ですよ。逮捕されるんじゃありません。牢屋にも入れられません」

俺は逮捕ではなく、「保護」されるだけだ。

それなりの自由は与えられるし、手錠で拘束されることはない。

「しばらく帝国自警団にお泊りするだけです。ちょっとした旅行みたいなものですよ」

…と、自分で言ってみたものの。

旅行…にしては、いささか物騒かな。

「俺が…お前を一人で行かせると思ってるのか?」

真剣そのものの眼差しで、ルルシーが俺に尋ねた。

…思いませんね。

「牢屋の中だろうと、戦場のど真ん中だろうと、地獄だって、お前の為なら俺は恐れない。俺が恐れるのは、お前だけを危険に晒して、自分だけは安全な場所にいることだ」

「…知ってますよ」

もう何回も言われましたからね。

「何処に行っても良い。でも、一人では行くな。俺とお前は…一蓮托生だろう」

「…えぇ、知ってます」

俺もそのつもりですよ。勿論。

…だけど、今回は。

…いや、今回もと言うべきか。

「ルルシー。今回は…俺とあなたは、同じ場所には行けないんです」

「はぁ?」

「俺が連れて行かれる理由はは保護目的。一方で、ここでルルシーが抵抗して、帝国自警団に連れて行かれてしまったら、それは逮捕です」

「…」

…意味、分かってもらえてますかね?

「俺は、帝国自警団にしばらく保護されるだけですが…。ルルシーは逮捕されて、牢屋に入れられ、裁かれることになります。そうしたら、簡単には出られないんですよ。分かるでしょう?」

「…」

…分かってるようですね。その顔を見ると。

こんなことをルルシーに言わなきゃならないのは、俺としても非常に不本意だ。
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